2、呪いなんてない【END貼り付けにされた先生】 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
呪いなんてない……。
そう思うのね。
そう……。
無理もないわね、まだ一年生ですもの。
でも、そんな考えでいられるのも今のうちだけよ。
掲示板の呪いは、本当にあるんだから……。

私が一年の時、こんなことがあったの。
今から二年前よ。
知っている人だっているんじゃないかしら?

その頃、秋山恵利子という保健の先生がいたの。
まだ若くて、きれいな先生で、よく女の子の悩みを聞いたり、相談にのったりしてたようよ。
その相談ごとの中に、死の掲示板の呪いのことがあったの。
相談を持ち掛けたのは、一人の女生徒だったわ。

「先生、死の掲示板って知ってますか?
いろいろと、不吉な噂の絶えない掲示板なんですが……」
ある日……。

彼女は授業中に居眠りした罰として、掲示板の掃除をするはめになったの。
呪いを恐れて、みんなが触るのも嫌がるから、掲示板はすっかり埃だらけ。
古い掲示板も、新しい掲示板もベタベタ貼ってあって、掃除するには全部剥がす必要があったわ。

女生徒はため息を一つつくと、掲示板を外し始めたの。
噂を知らないわけじゃなかったけど、掲示板の呪いより、先生に怒られるのはもっと怖かったのね。
その作業の途中で、彼女の目は一枚の紙に釘付けになったわ。
その紙には、

『くやしい』
……とだけ、赤い文字が並んでいたの。
その時はちょっと気になったけど、あまり考えないようにして、さっさと掃除を済ませたんですって。
もちろん、その紙は外して捨てたわ。

それから二、三日の間は、特に何もなかったのだけど……。

「先生……。
今朝、これを見つけたんです」
そういって女生徒が差し出した紙には、

『お前も道連れだ』
真っ赤なインクで、こう書かれていたそうよ。
彼女はこのメッセージを見て、掲示板の呪いが恐ろしくなったの。
そして、秋山先生に相談したのよ。

秋山先生なら年が近いから、きっと呪いのことを信じてくれると思ったのね。
思い詰めた女生徒の相談に、先生は微笑みながらこういったわ。

「それは誰かの悪戯じゃないかしら?
あなたたちぐらいの女の子は、精神のバランスが崩れやすくてとても暗示に掛かりやすいのよ。
それを知ってて、悪戯する子がいるの。
私も、そうやってからかわれた覚えがあるわ。
こういう時は、くよくよ気にしちゃ駄目。
明るく笑い飛ばしとやらなきゃ!」
やっぱり秋山先生も、他の先生たちと同じで、幽霊や呪いなんて信じない人だったの。

先生に信じてはもらえなかったけど、その笑顔に安心した女生徒は、幾分落ち着いた様子で保健室を後にしたわ。
ところが……!
彼女は、次の日から姿を消してしまったの。
……いいえ。

その日、家に帰っていないというから、正確には、保健室を出てから……ってことになるわね。

ゲタ箱には彼女の靴が残されていたわ。
だから、校舎のどこかにいるはずなのよ。
朝から警察が来て、必死で行方を捜してたわ。
ちょうど、その頃……。
生徒の間でも、一つの問題が起こっていたの。

例の死の掲示板よ。
女生徒が失踪した頃から、不気味なメッセージが貼られてるって大騒ぎだったわ。
『出席番号が一桁の生徒が一人、死ぬ』
『明日、二年D組の生徒が怪我をする』
『放課後、一番最後に校舎を出た者を呪ってやる』

次から次へと、こんな不吉な予言めいたメッセージが貼られてるのよ。
生徒手帳の写真が、ズタズタに切り刻まれて貼付けられてる人もいたわ。
恐怖のあまり震えが止まらなくなる生徒……。
逆に、好奇心で掲示板の前に集まって来る生徒……。

先生たちが駆けつけた時には、掲示板の前はすっかりパニック状態に陥ってたわ。
先生たちは、混乱してる生徒を教室へ帰そうと必死だった。
でもね、その場にいた生徒は誰一人として、その場を離れようとはしなかったの。

みんな、足から根が生えたかのように、そこから動こうとしなかったのよ。
不思議なことに、その場を離れられなくなったのは、先生たちも一緒だったわ。
生徒を叱り飛ばす声が小さくなっていって……。

「みなさん、こんな所で何を……?」
秋山先生が遅れて現れた時には、その場にいた全員の視線が、掲示板の一点に集中していたわ。
視線の先には、一枚の紙。
その紙には、真っ赤な文字が……。

『呪いなんてないっていったのに……』
その紙を見た瞬間、秋山先生の顔色がさっと青くなったわ。
そして、徐々に赤みを帯びていって……。
「こんな時に不謹慎な!!」
秋山先生は、つかつかと掲示板に近づくと、その紙を一気に引き剥がしたの。

紙を止めてあった画鋲が飛び、周りを囲んでいた生徒の間から、小さな驚きと恐怖の混じった悲鳴が上がったわ。
「こんな物!こんな物……!!」
紙をビリビリと引き千切る秋山先生の姿は、まるで鬼のようだったそうよ。

見開かれた目は血走り、額にはくっきりと浮かび上がった青筋……。
そして、先生が手を止めた時……。

「次は先生の番ね……」

それまで黙っていた人垣の中から、ふいにこんな呟きが聞こえたの。
その声が届いていたのか、いなかったのか……。
秋山先生は、肩で大きく息をしながら、フラフラと歩いていってしまったわ。
その翌朝……。

……ねえ、倉田さん。
私も、一年E組だったのよ。
教室は、三階の廊下の突き当たり。
……あなたと同じね。
ふふふ……。
毎朝、昇降口を通って、廊下の端にある階段へ向かっていたわ。

私、誰もいない教室が好きなの。
それで、誰よりも早く登校しているから、めったに人に出会うことはないわ。
ところが……。
その日は、いつものように教室へ向かおうとしてると、掲示板のところに女の人が立っていたのよ。

秋山先生だったわ。
掲示板を背にして、両腕を広げて……。
……いったい、何をしてるのかしら?
私、声をかけようと近付いていったの。
「先生…………?」
その時、上履きの下でヌルッという感触がしたのよ。

下を見ると、私の足元には真っ赤な血溜まりが……!!
秋山先生は、掲示板の前に立っていたわけじゃなかったの。
掲示板に貼り付けられていたのよ。
先生の首や手首には釘が打ち込まれ、そこからは真っ赤な血が流れ出していたわ。

誰かの呟いた予言の通り、今度は先生が呪いの犠牲になったのよ。
警察が来ていろいろと調べていった結果、先生は学校内に入り込んだ変質者によって殺されたことになったわ。
もっとも、先生たちは生徒の噂を否定しなくなっていたわよ。

昨日の秋山先生の様子が、あまりにも不気味だったからよ。
そして、死の掲示板を取り外すことに決まったのだけれど……。

作業を始めようとすると、必ず怪我人が出るの。
金槌で腕を打ったり、釘を踏み抜いたり、頭上から物が落ちて来たり……。
もともと不吉な噂が絶えない物で、死人まで出てる。
しかもそんな事故まで続いたら、みんな触るのを嫌がるわよね。

だから、今でもあの掲示板は残ってるのよ。
ふふ、二年たった今でも、血の染みや釘の跡がしっかりと残ってるわ。
今日の帰りにでもよく見ておくといいわ。


『2、知らない』を選んでいた場合



最近、また新しいメッセージが貼ってあるそうよ。
それがどんなメッセージか……。
自分の目で確かめることね。
私の話はこれで終わりよ。
次の話へ行きましょうか……。


『1、知ってる』を選んでいた場合



ところで、倉田さん……。

あなたさっき嘘をついたわね?


1、はい
2、いいえ



『1、はい』



ふふふ……。
そうよね、あなたは掲示板の存在を知らなかったはず。
……なのに、掲示板の呼び名を知っていたんですもの。
自覚してるということは……。
あなた、わざと嘘をついたのね。



『2、いいえ』



あら、もう忘れちゃったの?
あなた、掲示板の存在を知らなかったはずよ。
……なのにどうして、掲示板の呼び名を知っていたの?

ふふふ……。
本当は、掲示板のこと知ってたのに、知らないって答えたんでしょう?
……ほら嘘をついてるじゃない。



※以下同文※



私、嘘つきは本当に大っ嫌いなの。
いい?
掲示板の呪いは、まだ続いているのよ。
あなたがそんな態度をとっていると、いつか呪われることになるわ。
簡単なことよ。

十三日の金曜日に、あなたの名前と出席番号を書いた紙を、掲示板に貼っておけばいいんですもの。
後は、みんなが噂を広めてくれるわ。

ふふふ……。
気を付けてね、倉田さん。
……私の話はこれで終わりよ。
次は誰の番かしら……?


〔攻略ページに戻る〕

TOPに戻る