5、荒井昭二【PS追加END罪悪感に包まれる部室】 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
……誰もが犯人に思える。
……けれど、確実な証拠はない。
僕は、この中から犠牲者を一人出さなければいけない。
どのみち、ここで一人を指名しなければ、みんなが殺されてしまうかもしれない。
その時、ふと一人の名前が浮かんだ。

……荒井昭二。
何故かはわからない。
この人は神田さんとは何の関係もない人なのに……。
ここにいる、日野さんの集めたメンバーの中でただ一人、神田さんと無関係な人。

もしも日野さんが、何か思うところあって、神田さんの関係者ばかりを集めたのだとしたら、この人も何か秘密があるのかもしれない……。

彼にたいする好奇心が、僕の中で大きくなっていった。
そしてついに、その誘惑を読まれてしまったのだ。
(わかった。
荒井昭二だな……)
神田さんであろう声が、僕の頭の中に響いてきた。
(ち、違う!
そうじゃない!
彼は……)
僕の心の中の叫びも、どこか弱かった。
好奇心の方が強かったのかもしれない……。

はっとなった時にはもう遅かった。
神田さんであろうその人は、ロボットのようにぎこちなく歩き出すと、ぱたっぱたっと足音を響かせて、みんなの周りを歩いていた。
荒井さんを捜しているのだろうか……?

首がなくても誰が誰か、ちゃんとわかるなだろうか……。
そして、彼は荒井さんの後ろでピタッと止まった。
荒井さんは目を閉じて、必死に祈っている。

その時、明かりがぱっと消えた。
と、同時にものすごい叫びと、なにかをへし折るような音が聞こえる。
暗闇で、なにかが起きるというのはいいものじゃない。
なにかが、確実に起こっているのに動く事すらできない。

すると、ほどなく電気がついた。

「ひっ!!」
僕たちは、声にならない叫びを上げていた。
そこには、首をもがれて倒れている荒井さんの死体が転がっていた。
まだ、ちぎれた首の動脈からは血が吹き出している。
体も、まだけいれんしているようだ。

そして、僕たちは凍りついた。

部室の入り口に、神田さんが立っていた。
そう、ちぎった荒井さんの首をつけて……。
(俺の首ができたよ。
誰でもよかったんだ。
この首は見たこともない人のだが、なかなか悪くないよ。
俺を殺したやつでなくて残念だけど、これでやっと救われる)
神田さんは、荒井さんの顔で僕のほうを見ていた。

その時、神田さんとは別の声……、荒井さんの声が僕の頭に聞こえてきた。

(坂上君、ひどいですよ。
僕が何したっていうんですか?
何故、僕を犠牲にしたんですか?)
どうしよう、僕はとんでもないことをしてしまった。
僕の好奇心で、なんの罪もない荒井さんを殺してしまったんだ。

荒井さんの首をつけた神田さんは、くるりと背中を向けると、そのまま廊下に消えていった。

(坂上君、ひどいですよ)
いつまでも、荒井さんの声が耳に残っている。
もし他の人を指名していたら……?
こんなことなら、自分が犠牲になるべきだったのかもしれない。

ふと見ると、元木さんが泣いている。
元木さんだけでない。
みんな、神田さんの事件とは無関係な荒井さんが犠牲になった事に、多少の罪悪感を感じているようだ。
だが、これは僕の招いた結果だ。

もともと、僕が彼を選んだからこうなってしまったわけだ。

僕は責任を取らなければ……。

「みなさん、今日はありがとうございました」
僕はそれだけいって頭を下げると、荒井さんの首のない死体を背負って、一目散に部室を飛び出した。
みんな呆然としただろうな。
でも、あそこで死ぬわけにはいかない。

これ以上の迷惑は、かけたくなかった。
僕は走った……。

ふいに、荒井さんの死体が動いた。
手が、僕の首を絞めようとしている。
(どうぞ。
あなたを殺してしまったのは僕だから……)
すると、どこからか荒井さんの声が聞こえてきた。

(そういってもらえて嬉しいよ、坂上君。
これで、僕も救われる……)
僕の首を絞める手に、力が込められた。
遠くなる意識の中で、僕はぼんやりと思った。
僕の魂を救ってくれる人は……。

(旧校舎END)

〔攻略ページに戻る〕

TOPに戻る