4、細田友晴【PS追加ENDこんな首要らない】 | ナノ
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……誰もが犯人に思える。
……けれど、確実な証拠はない。
僕は、この中から犠牲者を一人出さなければいけない。
どのみち、ここで一人を指名しなければみんなが殺されてしまうかもしれない。
そして、僕は決めた。

……細田さんだ。
彼は、神田さんのことをものすごく恨んでいるはずだ。
愛する福沢さんを取られたことでどんなに彼を恨んだだろう。
自分の彼女を取られた……、そんな被害妄想にとらわれてしまいそうなタイプだ。

……そうだ、細田さんが神田さんを殺したかもしれない。
だから、神田さんに取り殺されても当然なんだ。
僕は、彼を選んでしまったということを自分の中で正当化しようとしていた。

そして……。
(細田友晴さんです……)
僕は頭の中でつぶやいた。
(……わかった)
返事らしき声が声が僕の頭の中で響く。

そして、神田さんであろうその人はロボットのようにぎこちなく歩き出した。
ぱたっぱたっと足音を響かせて、みんなの周りを歩く。
みんな、目をつぶり強くこぶしを作っている。
みんなの、自分の後ろでは止まらないでくれという叫びが聞こえてくるようだ。

……本当に僕がいった人を殺すのか?
しばらく、神田さんは歩いていた。
首がないのによく歩けるものだ。
感覚でわかるのか。
どのみち、もうこの世のものではないが。

そして、細田さんの後ろでピタッと止まった。
や、やっぱりそうだ。
本当だった。

その時、明かりがぱっと消えた。
と、同時にものすごい叫びと、なにかをへし折るような音が聞こえる。
暗闇で、なにかが起きるというのはいいものじゃない。
なにかが、確実に起こっているのに動くことすらできない。

すると、ほどなく電気がついた。

「ひっ!!」
僕たちは、声にならない叫びを上げていた。
そこには、首をもがれて倒れている細田さんの死体が転がっていた。
まだ、ちぎれた首の動脈からは血が吹き出している。
体もまだけいれんしているようだ。

そして、僕たちは凍りついた。

部室の入り口に、神田さんが立っていた。
細田さんの首を、両手で抱えるようにして……。

神田さんは、その首を自分の体につけようと持ち上げたが、すぐにポイッと床に捨ててしまった。

細田さんの首は、ボールのように転がり自分の体にぶつかって止まる。
(だめだ、いくら俺を殺したやつでも、こんな首じゃ俺は救われない!)
神田さんが、僕達の方へ一歩足を踏み出した時!

細田さんの首が、ふわふわと宙に浮かび上がった。
(ひどいな、君って)
細田さんの首は、神田さんの体の周りを飛び回りながら、なんだか文句を言っているようだ。
(僕の首のどこが気に入らないっていうんだい?
失礼なこと言わないでくれよ)
そう言って、細田さんの首は無理矢理、神田さんの体にくっついてしまった。

(よ、よせ……やめろ……)
神田さんは、ばたばたと体をよじって首をはずそうとするが、どうも思うようにいかないらしい。
体の自由が奪われているようだ。

やがて、悔しそうなうめき声が部室内にとどろき、それと同時に、神田さんの体は消えてしまった。
細田さんの首だけが、ふわふわと飛んでいる。
そしてまた、細田さんの声が僕の頭に聞こえてきた。
(嫌な人だね。
死んでもちっとも変わってないや。
僕に二回も殺されるなんて……、うひひ、かわいそうだねぇ)

細田さんは、気味の悪い笑顔で僕を見ている。
(坂上君、今日のことは忘れないよ。
絶対に……)
次の瞬間、首のない細田さんの体がむっくりと起き上がった。

彼は、自分の首を腕にしっかりと抱いて廊下に出ていくと、そのままものすごいスピードで走り去っていった。

どこへ行くというのだろう?

細田さんがいなくなった後、部室内は静まりかえっていた。
誰も何もいわない。
僕は、無意識に握っていた元木さんの手を強く握りしめた。
彼女は、僕の目をじっと見つめている。
僕の心の中を、全部知っているような瞳だ。

僕は、本当に彼を指名してよかったのだろうか?
しかし、神田さんはいっていた。
彼が自分を殺したと……。
細田さん自身もそれを認めていたじゃないか。
ただ、細田さんは、僕が彼を犠牲として指名したのを知っているようだった。

それを恨んでいるとしたら……。
僕の命が危ない!?

すると、元木さんが僕の手をしっかりと握り締めた。
「大丈夫、私が守ってあげる」
すべては終わったのだ。

ここでのできごとは、七人の秘密ということで話はついた。
まあ、そんな約束をしなくても、誰も人に話すわけがない。
話したところでどうなるわけでもないし、どうやら他の人には、神田さんの声も、細田さんの首の言葉も聞こえてはいなかったようだ。

僕以外ではただ一人、元木さんだけがわかっているのだろう。
事件の真相は、この二人の心の中にだけ記録された。
細田さんは、行方不明のままだ。
いつ、僕の前に現れるか、と思うと不安になるが……。

とりあえず、一週間が無事にすぎた。
彼女が守ってくれているおかげかな?

「坂上くーーーん!」
……あ、早苗ちゃんだ。
早苗ちゃんが、手を振りながらこっちに走ってくる。

時計を見た。
約束の時間ぴったりだった。
あれ以来、早苗ちゃんとは、よく話すようになった。
素直でいい子だ思う。

彼女の中に住んでいるというおばあちゃんやおじいちゃんの話を、僕は全面的に信じているわけではないが、彼女が不思議な能力を持っているのは間違いないことだと思う。
そして、偶然では片付けられない運命というものを、僕は彼女と出会ったことにより信じられるようになった。

本当に僕と早苗ちゃんが結婚するかどうかは、まだ先のことだからわからない。
けれど、今は彼女を大事にしようと思う。

……そういえば昨日、学校の七不思議の特集の原稿をまとめた。
七話目をどうしようか迷ったが、さすがにあの部室での出来事は書けなかった。
仕方ないので代わりに、『七つ目の話を聞くと悪いことが起きる。だから、ここに書くことはできない』と、記しておいた。
学校の七不思議をすべて聞くと悪いことが起きる……。
そういう噂は、どこの学校にもあるようだから。
僕は、あのときの出来事を、今後、誰にも話すことはないだろう……。

(新校舎END)

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