「君、何をいっているんだい?
……なんだか変だよ」
鈴木君は、眉をしかめたわ。
顔はきれいでも、性格は怖いなって思ったのね。
彼はもててたから、こういう女の子にかかわるとどうなるか、よく知っていたのよ。
だからきっぱりと交際を断ったの。
「ごめん。
悪いんだけど、君のような子とつきあうのは遠慮させてもらうよ」
そして、さっさと行ってしまったんだって。
平井さんは、ぽつんと一人泣いていたそうよ。
彼女の占いは、今度もはずれだった。
いつもならそれで、あきらめもついたんだろうけど、一度は鈴木君からつきあおうっていわれたわけじゃない?
ほんの一瞬で消えちゃったけど。
それがよけいに彼女を悲しませたのよ。
そして、ますます占いにのめり込んでいったんだって。
何を占ってたかって?
鈴木君の事よ。
そう簡単には忘れられないよね。
今彼が何してるとか、明日の彼の運勢はとか、いろいろ占ってたみたい。
ある日、その占いが当たっちゃったのよ。
それは、鈴木君が怪我をするっていう占いだったんだけど、その日、彼は階段で転んで足を捻挫しちゃったんだって。
平井さんは大騒ぎしてたんだけど、誰も本気にはしてなかったからね。
でも、まぁたまには当たる事もあるんだね。
で、すまされちゃってたの。
それからも平井さんは、鈴木君の事を占い続けたわ。
そして、そのうちの幾つかは当たるようになっていったの。
それも不吉なものばっかり。
試合に負けるとか、怪我をするとか、悪い結果ばかり当たるんだって。
さすがに、皆、気味悪くなって、平井さんが呪いをかけてるんじゃないか、なんて噂まで流れてた。
平井さんはいつも通りに占ってただけだったのに。
呪いなんて、甘えん坊の彼女にできるわけないじゃない。
彼女の占いが当たるようになった。
ってさっきいったけど、厳密にいえば、占いの通りに現実を運ぶが人いたのよ。
平井さんの事が好きで、彼女を悲しませた鈴木君を憎んでる人。
そう! それは彼女のお兄さんだったの。
大事な妹が泣いて帰ってきたんだもの、お兄さんとしては、原因である鈴木君が許せなかったのよ。
それで、平井さんの占いの結果通りに鈴木君に復讐をしていたの。
階段から突き落としたり、試合の前夜にいたずら電話をかけたり、かなり危険なまねしてたんじゃないかなあ。
けっきょく、鈴木君は卒業を目前にしながら、転校してっちゃったって。
このままこの学校にいたら命が危ないと思ったのよ。
平井さんのお兄さんが、犯人だなんて誰も思わなかったから。
鈴木君自身も知らなかったんじゃない?
うふふふ、何故って顔してるよ。
私が犯人を知ってるのがおかしい?
うちのお姉さん、平井さんのお兄さんにあこがれてたんだって。
それでいつも見てるうちに偶然、鈴木君を突き落とすところを見ちゃったんだってさ。
あこがれの人だったからね、誰にもいわずに秘密にしてたのよ。
だから彼の行動は、鈴木君どころか、妹の平井さんも気付かなかったの。
でも知らないって怖い事よね。
転校していく鈴木君に、平井さんたら、
「今までの災難はね、全部、鈴木君が運命に逆らった罰なんだよ。
私は鈴木君の幸運の女神だったのに、変だなんていうから罰を受けなきゃいけないのよ」
なんてこといったんだって。
それから鈴木君がどうなったか知らないけど、平井さん兄妹は相変わらず仲良く暮らしてるみたいよ。
占いっていったい何なのかな。
人生をよりよく生きるための助言だと思ってても、それに振り回されちゃう人の方が多いよね。
鈴木君なんて、見事に巻き込まれちゃって……。
だから怖いの。
坂上君も気を付けた方がいいよ。
たいていの女の子は占いが好きなんだから。
うふふ。
私の話はこの辺で……。
どうするの、七人目はまだ来ないよ。
ねぇ、坂上君?
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