『2、飲めない』→『1、はい』→『1、はい』【PS追加END疑心暗鬼】 | ナノ
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うん、そう言うと思った。
恵美ちゃん、優しそうだもん。
杉浦さんもね、この時はこう答えたんだよ。
「は、はい」
宮城さんは、本当に具合悪そうだったのよ。
さすがの杉浦さんも放っておけなかった。

宮城さんの肩を支えるようにして、ゆっくりと校門の中へ入って行ったの。

一番近くて、わかりやすい位置にあったのが、例の体育館の水飲み場だった。
杉浦さんも、宮城さんをそこへ連れて行ったの。
水飲み場につくと、宮城さんはおいしそうに、水を飲んでいた。
「ありがとう。
もう大丈夫」

一息ついて、宮城さんはお礼を言ったの。
それは、杉浦さんにとっては物足りない感じもしたけれど、やっぱりちょっとうれしかったみたい。
だからその日は、少し幸せな気分で家に帰ったのよ。
途中までは、宮城さんと一緒にね。

そして、翌日。
杉浦さんは登校して、呆然となったの。 クラスメイトの視線が冷たいのよ。
私から見れば、
「今頃気付いたの?」
って感じだけどね。

変に態度がよそよそしくて、話しかけても返事もしてくれないのよ。
杉浦さんは、考えた。
これはきっと、昨日の出来事のせいだって。
昨日、宮城さんと一緒にいるところを、誰かに見られてしまったんだって。

だから私まで、とばっちりでいじめにあってるのよ。
……どこまで勝手なのかしら。
想像力が豊かというか、よく、そこまで他人のせいに出来るわよね。
彼女、その時まで自分が嫌われてるって事に、まったく気付いてなかったのよ。

昨日、わずかながら感じた幸せも、もう、記憶の彼方に追いやられていた。

それでね、杉浦さんは宮城さんのクラスまで乗り込んで行って、文句を言おうとしたんだよ。
一言、言わないと気が済まなかったのね。
でも、そのクラスの前まで来た時、信じられない物を見たの。

教室の中では、女の子達が楽しそうにおしゃべりしていて……。その中心に、宮城さんがいたのよ。
今まで、いじめにあっていたとは思えないほど、親しまれ、人気者のようだった。
別に、何てことない、よくある事なのに。

もともとのいじめだって、宮城さんが転入生で、クラスに馴染めずにいたってだけの理由から始まったんだもん。
オカルト趣味だって、この年頃の女の子は誰でも一度は、はまるものだよ。
呪いなんて、噂におひれがついただけ。

そんなの、たいていの場合は、時間が解決するものじゃないかなぁ。
それに、宮城さんて結構、おもしろい子で、話上手だったんだって。
クラスの人気者にだって、すぐになれたと思う。

だけど杉浦さんには、それは信じられない事件だったのよ。
自分と、宮城さんのポジションが、突然入れ替わったような錯覚を起こしたの。
ふいに、以前耳にした宮城さんの噂が、頭の中に浮かび上がって来たのよ。

これが噂の、彼女の呪いなのかしら?
彼女に触れたら呪われるって……。
確か、そう聞いた。
その時、教室の中の宮城さんが、杉浦さんに気付いてにっこりと微笑んだの。
普通の、友達なんかに笑いかける時のような顔だよ。

昨日、杉浦さんには親切にしてもらってるもの、怒ったり無視したりはしないよね。
でもね、杉浦さんには、その笑顔もあざ笑うような、いやーな顔に見えたの。
まさに、疑心暗鬼だよ。
その日から、杉浦さんは自分の部屋に閉じこもって、一歩も外に出なくなっちゃった。

「私は呪われてる。
魔女が呪いをかけたんだ」
って、うわ事のようにぶつぶつ繰り返して、食事もろくにとらなくなったんだって。
自分以外の人間は、たとえ親だろうと、魔女……つまり、宮城さんの仲間だと疑っていたのよ。

そして、彼女はついに一つの結論に達したの。
呪いを解くには、それをかけた張本人を倒すしかない。
随分、神経がおかしくなってたみたいだね。
ベッドから起き上がると、ふらふらと夢遊病者ように歩いて行った。

道がわかっているのか、彼女は学校にたどり着いていたの。
校門の所でじっと宮城さんを待ってたんだって。

「お願いがあるの。
一緒に来て」
宮城さんも驚いただろうね。
突然、校門の影から手が伸びて、ガシッと自分の腕をつかんだんだから。
しかもそれは、やせて、目だけが異様なまでにギョロギョロした杉浦さんじゃない。

どうしたんだろう、急に……。
なんて思ったんじゃないのかなぁ。
お見舞いに行った時には追い返されてたからね。
宮城さんの返事も聞かずに、杉浦さんは腕をぐいぐい引っ張って歩き出したの。

もう、ふらふらしてはいなかった。
しっかりとした足取りで、ずんずん歩いていたようよ。

杉浦さんが宮城さんを連れて行ったのは、学校から少し離れた所にある貯水池だったの。
その堤防の上に、二人並んで立った時……!!

「ぎゃーーーーーーーーーーっ!!」
杉浦さんは、宮城さんを思いっきり突き落としたのよ。
やせ細ったあの体のどこに、そんな力があったのか……。
宮城さんはしばらくもがいていたようだけど、やがて、水中に沈んでしまったの。

「やったわ!
悪い魔女を倒したわ」
杉浦さんの甲高い笑い声だけが、響いていた。
その声を聞いて駆けつけた人が、杉浦さんを取り押さえたんだって。

宮城さんの死体は結局上がらなかったの。
藻や、水草が密集してる所に沈んだようで、ダイバーでも近寄れないとか……。
杉浦さんの方は、病院に入れられたって聞いたよ。
退院の見込みはないんだってね。

それでね、その事件のあった頃から、あの体育館脇の水飲み場の、右から二番目の蛇口からは、変な水が出るんだって。
泥とか砂の混じった臭い水が出るんだよ。
水道管なんかには全然異常なくて、ほかの蛇口は普通の水が出るのに……。

試しに蛇口を交換してみたけど、結果は変わらなかったの。
右から二番目の蛇口だけ、泥水が出るんだって。

皆、思い当たる事といえば、宮城さんの沈んだ貯水池から、その水道の水を引いてるってことだったの。
だからきっと、宮城さんの恨みや、呪いなんだって噂してたって。

そんなもの、直接、杉浦さんにぶつければいいのにね。
でもさすがに気味が悪いんで、先生達で蛇口を封印したんだって。
宮城さんの死体……?
まだ、水の中じゃないかなぁ?

うふふふ、どうしたの?
怖いの?
あははは、安心して。
今はもう、その貯水池からは水を引いていないんだよ。
少し前に大きなダムができたじゃない。
もっとも、そこで人が死んでないっていう、保証はないけどね。

そうだね、水源が変わったんだから、もう泥水は出ないかもしれないよ。
後で、蛇口の封印を解いてみようかな。
ほかの人には内緒だよ。
うふふふ。
私の話はこれで終わりよ。
……次の人は誰?

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