「それはできないわ。
だって、ここにとどまってしまうと、もう二度と成仏できないかもしれないもの。
それに、いつまでもとどまっていると、大変なことになってしまうわ……」
彼女はそういった。
「そうだわ。
あなたも私と一緒に行けばいいのよ。
あなたを連れていってあげる。
それならいいでしょ!」
彼は、喜んだよ。
彼女と一緒にいられるのなら、死んでもかまわないと思ったんだ。
それで、一緒に連れていってもらうことにした。
「うん、わかっわ。
連れていってあげる。
でもね、約束して。
これからあなたを連れて行くけど、私がいいっていうまで、目を開けちゃだめよ。
それを約束してくれなくちゃ、連れていくことはできないわ」
彼は、すぐに約束した。
絶対に目を開けないって。
そして、目を閉じた。
すると、彼女は彼に近づいて、そっと両手で顔を包みこんだんだ。
そして、額と額をくっつけた。
彼は、目を閉じて、じっとしていた。
しばらくすると、彼女は、何かをぶつぶつと唱えだしたんだ。
するとね、彼の周りで、何やら不気味な笑い声や、走り回る音がし始めたんだ。
彼は、気になって仕方がなかったんだ。
それでも、彼は我慢した。
必死に目を閉じていたんだ。
でもね、だんだんと生臭い匂いがしてきたんだ。
もう本当に鼻が曲がってしまいそうだった。
その匂いはね、どうも、彼女から臭ってきているみたいだったんだよ。
彼は、耐えきれなくなって、彼女から離れようとしたんだ。
でも、彼女は、頭をしっかりとつかんで、離れるのをこばんだんだ。
「……もう少しなんだから、我慢しなさい……」
それは、彼女の声ではなかった。
ものすごくしがれた声で、それはもう、地獄のそこから響いてくるような声だったんだ。
彼は驚いて、目を開いてしまった。
「ぎゃっ!!」
そこには、ほとんど白骨と化した彼女が立っていたんだ。
所々に肉片がこびりついていて、そこから異様な匂いが漂っていた。
「……どうして、目を開いたの……。
もうすぐだったのに……」
彼女は、頭蓋骨にこびりついている髪の毛を逆立てて怒った。
彼は、必死に彼女から離れようとしたんだ。
でも、彼女は離してくれなかった。
それでも、力任せに彼女を突き飛ばして、離れようとした。
すると、彼女の肘から先が外れて、ようやく離れることができたんだ。
そして、必死にトイレを飛び出して、助かったんだ。
彼女は裏切られてしまった。
そして、ひどく悲しんで、そのトイレにとどまってしまったのさ。
今でも狸になった彼女は、あのトイレで彼が戻ってくるのを待ってるんだ。
そして、入ってくる生徒がいたら、誰でもかまわず、連れていこうとするんだってさ。
だから、倉田さんもあのトイレには、近づかない方がいいよ。
近づいて行くだけで、彼女に呼ばれてしまうこともあるっていうから。
……これで僕の話は終わりだよ。
次はいよいよ最後の一人だね。
まあ、七人目の人が来なければの話だけど。
でも、この分じゃ、来そうにないよね。
じゃあ、倉田さん。 次の人にお願いしてよ。
僕、もう帰りたくなっちゃったよ。
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