2、覗かなかった【PS追加END徐霊失敗】 | ナノ
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僕は、どうしても中を覗いてみたくなった。
でも先生は、絶対に覗いてはいけないといっていたからね。
ここは、ぐっと我慢して、じっと待っていたんだ。
だってさ、マンガなんかでよくあるじゃない。

マンガの登場人物が、やっちゃいけないことをやってしまったがために、大変なことになるって話。
そんなのは勘弁して欲しいからね。

………………。
………………。
僕はどれくらい待っていたのだろう。
もう何十分も待っているような気がしたんだ。
でも実際は、ほんの十分程度だったんだけどね。

僕が廊下の窓から外を眺めていると、先生がトイレから出て来た。

「やあ、細田君。
待たせたね。
無事に終わったよ……」
先生は、相当疲れたのか、蒼い顔をして、脂汗をながしていたよ。
「じゃあ、もう大丈夫なんですね」
僕は、明るく問いかけた。

「ああ、だいじょうぶだよ。
もう何も心配することはないよ」
先生は、疲れているのに、無理に笑顔を作って答えてくれた。
きっと、僕に心配をかけないように気を使ってくれたんだね。

僕は、今度除霊の仕方を教えて下さいと先生に頼んで、その場を離れたんだ。

次の日に、僕に相談して来た女の子にそのことを話すと、ものすごく喜んでいた。
これで安心してトイレに行けるって。
それで、確かめてもらったんだ。
トイレの染みが、なくなっているかどうかをね。

僕に相談して来た女の子達は、連れ添ってトイレを見に行っていた。
「細田くーん。
だいじょうぶだったよー」
女の子達は、明るい声で、僕に報告してくれた。
僕に相談してよかった、なんていうもんだから、僕も、うかれちゃってね。

でも、実際に除霊してくれたのは、先生なんだから、先生にお礼をいってねっていったんだ。
女の子達も、そうだねっていっていた。
……その日はよかったんだ。

次の日。
おかしなことに、女の子達がみんな学校を休んでいたんだ。
僕に相談して来た女の子達だけが。
僕は、変だなって思いつつも、偶然だろうと思って、ほっといたんだ。

でも、それから数日たっても、彼女達は学校に来なかった。
担任の先生に聞いてみたけれど、話をごまかすだけで、何も教えてくれないんだ。
そのうちクラス中に、彼女達は家出をしたのか、家にも帰っていないらしいって噂が流れはじめた。

それで、先生は何も教えてくれないんだって。
彼女達は、除霊をした次の日から家に帰っていなかったんだ。

僕は、若月先生のところへ向かったよ。
先生は、気になる事があるからついてきて欲しいといって、僕を例のトイレまで連れて行ったんだ。

「先生、もしかして、除霊は失敗したんですか」
僕が聞くと、先生は上着を脱ぎはじめ、こんなことをいいだした。
「ちょうどよかった。
どうやって君をここに連れて来ようかって、悩んでいたところなんだ」

僕は、先生がなんのことをいっているのか、まったくわからなかった。
黙って先生を見ていたんだよ。
先生は上半身裸になると、僕にいった。

「君のいうとおり、あの時除霊に失敗したんだ……」
僕は、驚きのあまり、声も出なかったよ。
「……やっぱりこういう事は、素人はやらない方がいいね。
染みの奴、嬉々として僕に取り憑きやがった」
先生はそういうと、ぱっと振り返ったんだ。

「うわっ!」
なんと、先生のおなかの所に顔が張り付いていた。
正確にいうと、人の顔をしている染みがね……。
にたぁーと下品なにやけ顔をしているような表情。
先生の鬼気迫る顔とは、対照をなしていて、とても気味が悪かったよ。

先生は、じわりじわりと僕に近づいて来て、僕の腕をしっかりとつかんだんだ。
痛いくらいにしっかりとね。
僕は、足がすくんで身動きひとつできなかった。
先生はいうんだ。

「あれから……この染みが体に張り付いてから……妙に腹が減るんだ……。
食っても食っても物足りない。
いや、腹は一杯になるんだけどね。
……心が満たされないというか……いっこうに食べた気にならないんだよ。
原因はこいつさ。
こいつが腹を空かせているんだ……」
そういうと、先生は、にやりと笑った。

「ひいっ……」
僕は、小さな悲鳴を上げた。
先生は、僕に顔を近づけて、にやりと笑った。
ハァハァと先生は、興奮しているように息をしているんだ。
生暖かい息が顔にかかって、とても気持ち悪かったよ。
そして、先生は舌なめずりしながらいうんだ。

「……君と一緒に来てた女の子達、とってもおいしかったよ。
先生は、味は感じないんだけどね。
でも、先生にはわかるんだ。
こいつが……この染みが喜んで食べていたからね。
さすがにあの日は、食い過ぎた。

一度に4人も食ったんだ。
こいつ、気分が悪くなって、戻していたよ。
ゲェーってね。
すると出て来るんだ。
ぐちゃぐちゃになった、彼女達の体の一部が……。
髪の毛なんか絡み付いちゃっててね。

キヒヒヒヒ……もったいない事をしたよね。
滅多に食べれないごちそうだったのに……。
こいつ、若い女の子が大好きなのさ。
あれから、いろんなものを食わせてみたけど、やっぱり若い女の子が一番好きみたいなんだよ。

男はどうなんだろうね……。
君は太っているから、食べごたえがありそうだなぁ……」
背中を冷たい汗が流れる。
僕は、ヘビににらまれたカエルみたいに、身動き一つする事ができなかったよ。
「このトイレに入ると、食欲がわくんだ。
何でだろうね。
ここで食べる時が、一番落ち着いた気持ちで、食べる事ができるんだ」

先生は、そういうと、僕の頭をつかんで、おなかのところにある染みのところへ持っていった。
染みと目があった。
染みの目が細くなる。
まるで笑ったみたいにね……。
それと同時に、口の部分が開くように大きくなった。

僕は覚悟したよ。
先生に……この染みに食べられるんだって。
どうせなら、痛くないように食べてほしいなとも思ったよ。
その時に先生の体から声が聞こえたような気がしたんだ。

「……細田君、逃げて……」
「逃げて、細田君……」

小さいけど、確かにそういっているように聞こえた。
僕は、びっくりして、先生の体を見たんだ。

すると、さっき見た時には気が付かなかったけど、小さな別の染みが先生の体にあるんだ。
それも4つ。
やはり、人の顔をした染みだった。
その染みが、急にうめき出したんだ。
「うおおおぉーん。
うおおおぉーん」
ってね。
その途端、先生は苦しみはじめた。
耳を押さえて、やめろ、やめろって暴れはじめたんだ。
僕は、そのチャンスを見逃さなかった。
急いでトイレを飛び出し、逃げる事ができたんだ。

………………。

それから、先生は何事もなかったように生活をしていた。
あれから僕に会っても、今までと変わらない態度だったよ。
僕は誰にも相談する事ができなかった。
先生が食人鬼だってこと……。
怖かったんだ。

誰かに話すと、また先生があの時のようになってしまうんじゃないかと思って。
そうしているうちに、若月先生はいつのまにか、学校からいなくなってしまったんだよ。
表向きは、転勤だってことになってるけど。
本当かどうかはわからないよ。

だって、先生がいなくなってから、あのトイレの染みがまた復活したんだから。
若月先生も、染みに食べられちゃったんじゃないか……なんて、考えすぎかな。
そうじゃない事を祈っているけど。
でも、怖いんだ。

また、あの染みの犠牲者が出ないとはかぎらないだろう?
倉田さんだって、狙われないとはいえないよ。
気を付けて。

さ、僕の話はこれで終わり。
次は誰かな。

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