【次回予告】
さーて来週のシークレットガーデンは?
ブルーベルが目を覚ました時。
その空間は真っ白で、何も無かった。
どこまでも無音で、光に満ち溢れている。
そんな空間に、ただぽつん、と一人で立っていたのだ。
だから、これは夢だと思った。
「ここは一体どこかしら」
きょろきょろと周囲を見回すと、床に何かが落ちていることに気付いた。羊皮紙である。それを拾い上げるのだが。
「えっと……、シークレットガーデンの次回予告のご案内? ぺろぺろ……。ぺろぺろって、一体何かしら? 19日公開予定のSSは変態度100%?」
ブルーベルは首を傾げた。なぜだかわからないが、とても不吉な単語に聞こえたのだ。
ぺろぺろが。
「ウォルドなら何か知っているかしら。会ったら聞いてみようかな」
その後ブルーベルは深い深い眠りの底へ落ちてしまい、ぺろぺろという言葉さえも忘れてしまった。
【シークレットガーデン次回予告】
ついに、変態度100%でお送りします。
【おまけ】
暫くしてからブルーベルが待つ部屋へ戻ると、ブルーベルはソファーの上で眠っていた。
ブルーベルが朝早くに起きて家の手伝いをしていて疲れていることは知っていたから、僕はブルーベルを寝かせることにした。だがソファーの上では狭いだろうし、落ちる可能性がある。だから僕はブルーベルの体を起こすと、なんとか背負う。
「ぅん……、ウォルド?」
「あぁ、起しちゃった? 今ベッドに運んであげるから待ってね」
「うん……」
ブルーベルは寝ぼけているらしく、小さく頷いてから眠ってしまった。僕は自分の部屋へ戻ると、ブルーベルをベッドの上へ寝かせる。きちんと毛布をかけると、その寝顔を堪能した。ブルーベルの寝顔を見ることができるのは、僕だけの特権だからだ。
僕はブルーベルの隣へ寝ころぶと、左頬へそっとキスを落とした。
「早く君と毎日一緒のベッドで眠れる日がきたらいいのに。君が僕のお嫁さんになってくれるのなら、僕は一生君に尽くすよ。君を幸せにする為の努力を怠らないし、浮気もしないし、生涯君だけを愛する」
ブルーベルは寝ているから聞こえていない。
だからこそ、言うことができた。
というのも、今の発言は僕にとって叶えられるかどうかわからない、危うい未来だからだ。風邪を悪化させてそのまま、っていうことだって考えられる。
だから、彼女に告げる勇気が出なかった。
「もっと体が強ければ良かったのに」
そうしたら、何か変わったんだろうか。
体が強かったとしても、僕には結局ブルーベルを助ける手段がない。
いっそ、ブルーベルを攫ってしまおうか。
でもそれでは、根本的な解決にはならない。
僕はブルーベルの手を握った。
「ごめんね、ブルーベル。ごめんね、君を助けてあげられなくて」
深い眠りについているブルーベルに、僕は謝罪をした。
【反省会2】
「どうして上手くいかなかったのでしょうか」
ハンスはテーブルの上に肘をついて項垂れていた。その表情は悲嘆にくれており、瞳には絶望の色が浮かんでいる。
室内の中央には凡そ二十人が着席できるテーブルが置かれているのだが、そこに侍女、執事、庭師、料理長達が集まっていた。
彼らの目的はただ一つ。
力を合わせてブルーベルとウォルドを結ばせるということ。
だが、その計画は幾度となく失敗に終わり、または頓挫していた。
そうしてもう既に一日の締めくくりと化している話し合いが始まるのだ。
反省会という名の話し合いが。
「ハンスさん。本気で言っているんですか? 子供に絶倫になる薬を飲ませてはいけないでしょう」
副料理長がそう言った。薬湯に丸薬を混ぜた料理長は黙り込んでおり、知らぬ顔をしている。どうやら執事のハンスに全て責任を押し付けようとしているようだった。ハンスはそれを感じ取る。
「私は反対したのですよ。お坊ちゃまにそれはまだ早いのではないかと。でも料理長がですね、どうしてもと」
料理長はぎょっとした。よもや自らに矛先を向けられるとは考えていなかったからである。
「んな、私だって反対しましたよっ。でも、庭師のロニーが」
「それを言うなら、倉庫番のロイスが」
大人の男達による醜い責任のなすりつけあいが始まった。次第に口論は激しさを増し、頭に血が上った彼らは席を立ちあがって取っ組み合いをする。服が破れようが髪の毛が乱れようが、お構いなしである。
これに、侍女頭の女性が立ち上がった。勤続二十年になる女性である。
「その服、誰が洗濯していると思っているんですか?」
男達はしん、と静かになった。退屈そうに見ていた侍女達もうん、うん、と頷いている。
「破れた服は誰が補修をするんですか?」
「えー、私やりたくなーい」
「私もー」
次々に答える侍女達。男達は咄嗟に理解をした。この場で最も権力があるのは、彼女達だと。
そうして、侍女頭は再び問いかけた。
「今回の責任は、誰がおとりになるのですか?」
料理長が答えた。
「それはやっぱり、実行したハンスさんかと」
侍女頭はにこりと微笑んだ。
「最近、耳が遠くなってきたみたいですね。料理長」
「うぐっ」
「もう一度聞きますよ? 誰が、責任をとってくれるのですか?」
ハンスが一歩前へ出た。
「我々全員が責任をとります」
「よろしい。では、明日の朝、窓拭きと床掃除と庭掃除と洗濯を、任せましたよ」
「なっ!」
「私達はあなた方が破いてしまった服を繕わなければいけませんから」
「この広いお屋敷を、我々だけで掃除をしろと?」
「えぇ。嫌だとは、言いませんよね? そんなことをしたら、明日からあなた方の着る服は何一つ残らないと思ってくださいね」
逆らえる空気ではなかった。男達はガタガタと震えながら何度も頷く。
そうしてこの日から。
服を破くのはやめようという暗黙のルールができた。
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