焼きリンゴを食べ終えた後。 ブルーベルは憂い顔でため息をついた。ウォルドはその様子を見て、恐る恐る声をかける。 「どうかしたの、ブルーベル」 「別に…」 ぷいっ、とウォルドから顔を背けるブルーベル。 「でも、さっきから怒っているよね?」 ブルーベルはウォルドを思い切り睨んだ。 「ウォルドは、おっぱいが大きな女の人が好きなんでしょ」 「いや、否定はしないけれど…」 ブルーベルはウォルドに軽蔑した視線を向けた後、背中を向けた。 「ふん、だ」 ウォルドは右手を顎に当てて、考え込んだ。だがすぐに、口元に笑みを浮かべる。 「ブルーベル」 ウォルドは椅子から立ち上がると、ブルーベルの背後から抱きついた。 「なによ、くっつかないで」 「怒らないでよ、ごめんね、僕が悪かったよ」 「ウォルドなんて知らない」 「ねぇ、ブルーベル」 「……」 「僕ねぇ、胸が大きくなる方法、知っているよ?」 「へ、へぇー。そうなんだ? でも私、そんなの知りたくなんてないもの」 「そうなの? せっかく教えてあげようと思ったのに。ブルーベルが知りたくないのなら、無理に教えるのもなぁ…」 「ど、どうしてもって言うなら、聞くだけ聞いてあげてもいいよ」 ウォルドはより一層口元に笑みを浮かべると、ブルーベルの左耳へと顔を寄せた。 「あのね。男の人に胸を揉んでもらうと、大きくなるらしいよ」 「そ、そうなの?」 「うん」 「じゃあ、家に帰ってパパに…」 言いかけたブルーベルの言葉を遮るように、ウォルドが言葉を重ねた。 「この方法は家族以外の男性じゃないと、効果が出ないらしい。だから、君のパパじゃ効果はないよ」 「そうなの?」 半信半疑のブルーベル。ウォルドは大きく頷く。 「うん。だからね。僕が揉んであげてもいいよ」 ブルーベルはウォルドの言葉を疑った。 「また、からかっているんじゃないの? 胸を揉んでもらったら大きくなるだなんて、聞いたことないけれど」 「嘘じゃないよ。僕の知り合いが教えてくれたんだ。さぁ、どうする?」 「どうするって…」 「胸を揉んだら大きくなるって、今教えたじゃない」 「わ、私、別に大きくなりたいだなんて、思っていないよ? 別に小さいままだって、平気だし」 「わかっているよ。でも、試してみたくない? 僕だったら喜んで協力をするよ」 するするとウォルドはブルーベルの背後から手を伸ばした。ブルーベルの胸の真上へと手を回し、触れそうな距離で止める。 「え? ちょ」 「僕が、ブルーベルの胸をいっぱい揉んであげる。…そう、いっぱい、ね」 ウォルドの手がブルーベルの胸へと僅かに触れた。 その瞬間。 「いやっ!」 ブルーベルは背後へ思い切り頭を振ってしまった。 ゴツッ と鈍い音が響く。 ブルーベルは後ろ頭に何かが直撃したのを感じて、痛みを堪えるために両手で押さえた。 何に当たったのか、すぐに背後へ振り向いて確かめる。 するとそこに、鼻を両手で押さえて蹲っているウォルドの姿があった。 「ご、ごめんね、驚かせて」 ぽたり、ぽたり、とウォルドの鼻から血が出ていた。ブルーベルは椅子から立ち上がると、すぐにウォルドへ駆け寄る。 「ウォルド、もしかして鼻に当たったの?」 「あ、いや、これは違うんだ。君の胸にさわ」 「え?」 「ううん。当たったのは顎だよ。鼻血はたまたま出ただけで」 「ウォルド、ごめんね、ごめんね。本当にごめんなさい。痛かったでしょう?」 「ううん、これぐらいどうってことないよ。僕のほうこそ、嫌がることをしてごめんね」 ブルーベルは首を振った。 その後ウォルドは執事のハンスによって手当をしてもらったのだが、なぜかずっと顔がにやけていた。 |