ずびり、と鼻水を吸う音が地下の執務室に響く。今ここにいるのはわたしだけで、クダリ君のように場を和ませてはい、ナマエちーん!なんていつものようにやってくれる人はいない。
ちなみにノボリさんはマスクと風邪薬をわたしに渡してくれた。2人とも素敵な上司だ。


ただ、本格的に風邪が酷くなってきたのか思うように腕は動かなくて今持っているボールペンで報告書にひょろひょろとミミズのような字…のつもりであるものが視界に映る。しまいには視界も少しぼやけてきた、


「っごっほ!ごほ、」

気管につまるような酷い咳が出る。しんど、

がちゃりと人が入ってくる気配があるとどうじにふと遠くなる意識。

「ナマエさん!ナマエさん大丈夫ですか!?」

かすかに意識が戻ってきて目の前は黒に包まれた人、ノボリさんがいた

「は、い」


いつまでも椅子から転けそうになっているところを助けられている体制はノボリさんにとってきっと負担になっているだろうと思い、立とうとしたらノボリさんは少しほっとしたようすで、ひょいとわたしを抱き上げた

「失礼ですがナマエ、きちんと食はとってありますか?」

「あ、はい、きちんと三食ですが、どうかされましたか?」

「そうですね、軽すぎます。今日はおやすみくださいまし」

「い、いえ、まだ執務がですね!」


ぼすんと近場に置いてあったソファー…たしかノボリさんとクダリさんの仮眠場所…に下ろされてタオルケットをかけられる。
ふわりと香る匂いはノボリさんのもの。きっとノボリさんのタオルケットなんだろうな、



「わたくしがします。ゆっくりおやすみくださいまし」

「す、みませ、」

「いえ、いつも、ありがとうございます」


いつも無表情なノボリさんが少しだけ笑ったのを見るとわたしは安心しきったかのように自然に意識をはなした。


彼の匂いでおやすみ
(それにしても、仕事熱心な方です)(すー)(体を壊されるとわたくしも心配でバトルどころではありませんからね、)(んー…)(はいはい、タオルケットずれてますよ)
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