うず、うず
「…はぁ」
うず、うず、うず
「うむむ」
ばんっ
「さっきからなんなんです!?」
「バーナビー…」
「あたし、虎徹さんに抱きつきたいの…」
「は?」
さっきからずっとうずうずしていた理由。
虎徹さんがトイレに行っている間、最近の悩みである抱きつこうか抱きつかないでおこうかを悩んだ末にうずうずしてしまうという結果に至ってしまった。
ずっとため息やら唸り声やらを出していたらカタカタとパソコンのキーボードを押していたバーナビーがキレて今に至る。
「おじさんならきっと言えば向こうから抱きついてきますよ」
「でもさ、俺ロリコンって言われるの嫌だからとか言って拒否されたらあたし生きていけない」
投げやりなバーナビーの言葉で何パターンもの負のパターンを思い付いてしまう。
まずは年齢、軽く10歳の差があること。バーナビーよりは年上だけど、それでも10歳は痛い。
次に気持ち。もちろんあたしと虎徹さんは付き合ってなんてなくて、ワイルドタイガーへの憧れとか歳上への憧れとかじゃなくて1人の男性として、あたしは彼を見ている。だけど彼の気持ちを私は知らない。
最後に、彼がやもめであること。未だにしている左薬指のそれは見るたびにあたしを苦しめる。
じわりと目を濡らしていく。ツンとする鼻に泣いているのだと自覚させられる
「バーナビぃー…」
「ちょっと、泣かないでくださいよ、僕が泣かせたみたいになってるじゃないですか」
バーナビーがはい、と白いハンカチを差し出そうとしたところにがちゃりと扉が開く音。
「ナマエちゃーん、コーヒー欲しい、な…バニーちゃん、なにしてんの」
「はぁ、」
ひょいと浮く体、視界にはくるんと跳ねたブロンド。
「おい、バニー!」
訳もわからぬまま視界が高くなってずんずんと歩く。近くなる虎徹さん。
「ば、バーナビー!?」
ぽい、と虎徹さんの方へバーナビーが私を投げると「おわっと」という言葉とともに私の体はさっきとは違う温もりに包まれる。
「ご、ごめ、虎徹さ、」
「いや、その、だな」
「イライラするんですよ!くっつくならくっついてください!!」
ばたんとしめられるドア。未だに横だっこされてる私。
「あ、あの、下ろしてくださ、」
「…あのさ、##NAME2##ちゃん」
「は、はい!」
「おじさんのことさ、好き?」
「そ、そりゃあ、すきです」
「違うって。おじさんが聞きたいのは恋愛感情で。どーなの?」
滅多に見れない虎徹さんの真剣な顔にどくんと胸が鳴る。
「す、きです。虎徹さんが!恋愛感情で、好きなんです!」
「…そっか、」
ならよかった、と一言呟いてぎゅう、と私を抱き締める。力強くて、暖かくて少し涙がでる。
「幸せだって言ったら、私安上がりですか?」
「じゃあ俺も安上がりだ」
顔を見合わせて笑いが込み上げてくる。
バーナビーに初めて感謝したい、と思った。
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