さかさませかいのおうさま



「覇王…」

ぼそりと目の前の人物の名を呼ぶ

刹那に鋭い瞳が私にささり首に違和感を感じる


「は、おう…!」
「なんだ、と言ったハズだ」

彼は私の首を絞めながら冷たく刺さるような金色の瞳で私を見る。

氷のような視線は私を凍らせる。体が思うように動かない。

くるしいと感じている。酸素を求めている。なのに抵抗する力がでない。

「覇王っ、はなして、くださっ!!」
「要件を言え、さもなくば殺す」
「こ、のっ!状態、では…無理です!!」


できるだけ覇王に聞き取りやすく言ったが、やはり首を絞められているせいできちんとした声がでない。

十代だったら、こんなことしない…十代は友達だ。仲間だ。なのに十代のなかには覇王という闇があった。悔しい、いつも一緒にいていつも笑いあった仲間だから。なら私は十代を…覇王を助けたい。


私の想いが届いたのか覇王は私の首を鷲掴みしていた手を離し、ギラギラと輝く金色を私に向けた

「はやく言え」
「覇王…」
「なんだ」

そうぼそりと言葉をはなった覇王が私には悲しんでいるように見えた。私より大きいはずなのに小さく見えたんだ。私は覇王を包み込むようにして抱きついた。拒否、されるだろうか


「なんだ、離れろ」
「いや」
「ふざけるな!」

「覇王」


彼は私を突き放しはしなかった。むしろ落ち着いて見える。彼にも、優しさは残っている。いや、覇王なりの優しさがある、のだと思いたい

でも…

「十代…」

私が求めた優しさは十代のものだった。その言葉は覇王を苛立たせるものだった

「っ!貴様っ!!」
「う!」


覇王は十代というたった二文字の言葉に過剰反応したのだ

私を突き放し、再び私の首に手をやる。

力は本物で、殺そうとしていた



「その名前を呼ぶな。俺は俺だ」


嗚呼、彼は苦しんでいるのだろう。意識が朦朧とする中で困ったような表情をした覇王を見た。


「は、お…」


私はそこで意識がなくなった。意識がなくなるその瞬間に覇王は何かを言っていたが聞こえなかった。


目を覚ました時に見たものは薄暗い部屋の天井。

起き上がって見渡すとベランダのようなところにいかつい鎧を脱いだ覇王がいた

このまま見ると、そこに十代がいるような錯覚におちいる。

覇王は私に気付いたのか顔をこちらに向ける


やはり、十代の目とは違い刺すような金色だった。


「…すまなかった」


しかし、ぼそりと一言吐いた覇王の顔は微笑みを表して、私の心臓がトクンと跳ねた


「悲しいの?」
「どうだろうな」

顔は悲しそうにしているのに彼はわかっていない。


「名前、」

彼は私の名前を呼んでゆっくりと私に近付いた

カツカツと足音が聞こえるたびに私の心臓もトクトクと速くなる

私はおかしくなったのだろうか


そんなことを考えている私を不意打ちに抱き締める覇王

「え?」


今まで私が寝ていたベッドのスプリングがギシリとなる。

それと同時に私の心臓もドクドクと大きな音を鳴らしはじめる。顔が暑い



「俺はっ!」
「う、ん」
「必要、ないのか…!?」


声は震えていた。何かに怯えるように、私を抱き締める力をまして自分の存在意味を訴えた


「俺の名を呼べ」
「覇王」
「…もう一度だ」
「覇王…好きだよ」
「嫌わないでくれ…」
「…うん」


さかさませかいのおうさま
(それはとても)(儚げで)
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