マスクで風邪とキス魔予防



最悪だ。今日に限ってこんな仕打ち。神は私のことが大嫌いなんだよ、きっと。

「ごほっ、あ゛ーあ゛ー!」

声はガラガラ、熱で動けない。なんだよ、今日は何の日だと思ってるんだ。私の誕生日だぞバカ野郎。私の彼氏でもある優介にもメールで今日は来ないでねって書くだけでどれだけ時間がかかったか!産まれてきた日にまさかの展開。


「逢いたいなぁ…げほっ」
「じゃあやせ我慢しないでよね」

…え?

「ゆう、すけ…?」
「ハッピーバースデー、名前」


いつのまにか私の部屋に来ていた彼の手にはビニール袋。なにをしに…?

「ありがと…でも熱うつるよ?帰ったほうが…」
「それは俺の勝手でしょ?年に一度なんだ、熱なんかに記念日壊されたくないからね」

くるしい…熱のせいかな?優介がすごくかっこよく見える。
こんな日にどうして…ってまた自分をせめた。


「ごほっごほっ、ありがと…」
「うん。あ、マスクはしてね?貰ってきたから。」
「…うん」

ムードのむの字もないな、このマスク。しかもデカイ。女用もってこいよ。天才なのにどこか抜けてるよなあ…


「食欲は?」
「…え、優介が作るの?」
「…文句あるのか?」
「いいの?苦手って言ってたのに」
「あー…えー…お粥ぐらいは作れるよ…たぶん」
「楽しみにしてる」


マスクでモゴモゴして話しにくい。けど優介にはうつって欲しくない。だって熱で寝込んで誕生日なんて底が知れてるのに優介は来てくれた。大好き、だから…すごく、うれしくて。

やばい…体暑くなってきた。自分のバカ。


それにしても…



「優介…大丈夫?」
「なにが?」
「包丁持って固まってたから…」
「う、」


正直、怖い。
それに…


「優介、わがまま言っていい…?」
「俺が叶えられるのなら…」
「そばに、いてほしい」


熱のせいかな?そばに、優介がいないと不安で、怖くて。


「それでいいのなら…。」
「ありがと」
「お粥は?」
「いらないから、」

そばにいて、なんて。

「名前、」
「ゆ、すけ?」
「誕生日おめでとう」
「…ありがと」


ブカブカなマスクを優介がスッとはずした。
うつ、る

「ゆすけ、うつ…ん」

熱をうつすなとか言いつつ優介自体がうつるようなことしてるじゃないか、とは言えない。だって優介のきす、好き。


「名前の熱だったらもらってあげる」
「天才の言うことじゃないよ」
「名前の前だけバカになるよ。」
「ばか」


熱をだして最悪な誕生日だと思ったけど、こういう誕生日もいいかもしれない…

マスクで風邪とキス魔予防
(マスクの意味ないよね)(ブカブカのマスクってそそるよね)(!?)


title:にやり
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