早朝ぱにっく




状況がまったく読めない。

学校の為に起きる時間とはかけ離れて早く、空はまだうっすらと暗い。トイレに行きたくて起きた訳でもなく、怖い夢をみたわけではない。

聞き覚えのある声に起こされたのだ。しかしその声の持ち主が私の家にいるはずがない。しかも声に重みがなく少年のような声だった。


「………」
「………」
「迷子?」
「違う!」
「真田?」
「そうだ」

私は三文字会話をしたい訳じゃない。

じゃなくて問題は年長くらいの真田が私の目の前にいることだ。
私が知っている真田は身長が高くてどう考えても中学生には見えないような人だ。

「…可愛いね」
「問題はそこではない!」
「おいでおいでー」
「名字!ひ、人を犬のように…!」
「はいはい。」


おいでと言うと文句は言うものの私の方に手を挙げて寄って来る。可愛い。
真田が可愛い。

ぎゅう、と真田を抱き締めるとじたばたと抵抗を始めるが、私にかなわなかった。


「は、はなせ!」
「可愛い。あったかい。可愛い」
「男に可愛いなどと言うでないわ!」
「私と寝よっか」


ぴたり、と真田が抵抗を止める。どうしたものかと思い真田の顔を見ると随分幼くてぱっちりとした目が一杯まで見開いて真っ赤になっていた。


「な、お、あ、その、」

「へへ、私は眠い」
「し、か、」
「おやすみ、真田」

再びぎゅう、と抱き締めて布団に入る。
幼児体温であろう少々高い体温。夏にこの体温を抱き締めて寝るのは拷問だとは自分でも思うけど、この可愛さはそんなことを考える暇をもつくらせない。


「しかた、ない」
「ちゅーしたげよか?」
「い、いらっ」

ちゅ、とオデコにキスをすると泣きそうになりながら真っ赤になる真田。
あーあ、これくらい可愛いげがあればなあ。

「おやすみ」
「…うむ」


早朝ぱにっく
((……夢?))(おはよ)(…うむ)(戻っちゃったのか…)(!)

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