ふわり、ver:白石
ふわり、前を通った同級生からその子のものやろうシャンプーの香りがする。
花のような柔らかい匂い。
「あ、あの!」
「?白石くん?」
あかん。呼び止めてもうた、、。
あまりにも自分の理想の匂いやったんや。
「どうしたん?」
同級生やけどそんなに接点がない子、名字さん。なんで話しかけたんや、、俺。
「え、えっと…そ、そう、前髪にゴミついてんで」
「え?ほんま!?と、とってくれへん、、?」
「お、ん」
うわー、恥ずかしいわ。とほんのり顔を赤く染めて俺に近付く名字さん。必然的に鼻に入る香り。身長差のせいで俺を見上げることになるんやけど、こんな名字さんって可愛かった、やろか、、?
「あの、白石くん、どこまで近付いたらええん?」
さっきよりも顔が赤く、しかもそれが予想以上に俺に近くてつられて俺も赤くなった。
こんなん初めてや。
「もう、ええで」
「う、ん」
「…目ぇ瞑って」
「うん、」
目が合うことが恥ずかしいから目を閉じてもらったんやけど、名字さんはあんまり喋らない俺に緊張しとるんか長い睫毛がふるふると震えとる。
…キス、したい。
そう思ってから早かった。俺の手は名字さんの肩を掴んで俺の顔を近付ける、もう、、少し…
「し、らいしくん、、?」
ふと名前を呼ばれて我に戻る。
「あ、えっと、もうちょい…な」
「ご、ごめ、せかしてるつもりは、なくて、」
「いや、ほんま、ごめんな。」
名字さんの肩をつかんでいた片方の手を離して長い睫毛にあたかも埃があったように触れる。
「とれた、で」
「ほんま?ありがとう、」
ぱちりと目を開けて俺を見る。まだ近すぎる距離にどきどきと鼓動が高鳴る。
…俺今日変やわ、
「じゃ、あ。私教室に戻るわ。白石くん、も、遅れないようにね。」
「おん。ありがと、」
クラスに戻りたかったけど、変に頭がぼーっとする。
「白石ィーもう授業始まるっちゅー話や」
「謙也、、俺ちょっと遅れるって言うといて」
「どうしたんや?」
「ちょっとな、しんどいねん、」
「言うとくわ。無理したあかんでー」
「たのむ、わ」
頭の中にはさっきの名字さんの目を瞑っている姿が消えへん。
とりあえず、保健室行って頭冷やそうと思う。
ふわり、
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