バレンタイン財前
「先輩、バレンタインは手作りにしてください」
この言葉を言えたらどんだけよかったやろか。
俺は謙也君と違ってヘタレやない。やのに一言言えずにもう14日…ありえへん
「財前君、コレ受け取ってくれる、、?」
「………」
ほんまありえへん。こんなん俺やない。ヘタレとかカッコ悪すぎや、もう午前の授業終わってるんやぞ、、?気付かんとかもはや腹立たしい。
何より腹立たしいんは同学年、年下、年上。やたらと俺にチョコを渡す名前も顔も知らん女が来る。正直何が入ってるかわからなすぎて怖い。
「あ、あの、、」
「俺、知らん人から貰わん主義やねん」
「あ、ご、ごめんね」
ほら、泣きそうになりながら巣に帰るように女の群れに戻っていくんや。そんで、
「ひっどい、財前君」
「ほんと貰うくらいいいやんか」
あー、ウザイウザイ。
これやからバレンタイン嫌いやねん。
はよ名前先輩こーへんかな。あ、でも、俺がバレンタイン嫌いや言うたからくれへんかもしれへん、、、
「っやばい!」
部長と謙也君と同じクラスやったハズや。
ほんま、イライラする。オカンあと1年はよ生んでくれって何度思ったおもてんねん。
階段をかけ上がって3年の階にあがる。3年2組、偶然とはいえ嫌なクラスおるよな名前先輩。
そう考えたら変に嫉妬していてもたってもいれんくなって部活でもしたことないぐらい全力で走る。
2組、見つけた、、
バンッと大きな音たてて教室を見渡す。
「名前、せん、ぱ」
「財前やないか」
今は謙也くんに構ってる場合やない。名前先輩に、会いたい。んでチョコ、欲しい。名前先輩のが。
「名前どこですか」
「は?」
「謙也先輩、はよ、名前」
「ひかる君?」
おっ、た。
謙也くん見たときまた嫉妬して、先輩って呼んでもうた。自分どんだけ必死やねん。
「せんぱい、」
「ん?」
「あ、の、、」
どないしよう。先輩に向かってチョコくれなんて絶対言われへん。なかったらどないすんねん、ごめんな、なんて言われてみい。
気まずいわ。んで、俺にもプライドがあるんや。
どない、しよ。
「あ、え、と。」
緊張して何も言われへん。変にどもる、こんなんキャラやない。
「あ、ひかる君って甘いの大丈夫?」
「え?」
「いや、バレンタイン嫌いやって言うたから嫌いなんかなあ、って」
「大丈夫や、けど」
「よかったあ、これどーぞ」
俺の掌を細い手で上に向けて名前らしいラッピングをした箱を手の上におく
トクンと心臓が音をたてる。安心感と、名前先輩への愛しさが募る。
「わ、わ。ひか、」
気が付いたら3年の教室だとかそんなん関係なしに名前先輩を抱き締めてた。ちっさい。また、力を強める。冷やかしの声がBGMになってうるさい。でも腕の中にある温もりが俺のイライラを無意識に抑える。
「ありがとう、ござい、ます」
「い、えいえ」
そんなに喜んで貰えるならもっと手の凝った物つくればよかったなあ、と少し残念そうな声が聞こえて、焦った。
「先輩からのやったら、なんでも、うれしいっすわ。嘘やないです」
「今日のひかる君、私殺す気なん?めっちゃドキドキするわ、、」
、、俺かて負けてません。
また、素直に言えない自分に腹がたったけど俺の胸に顔おさめてる名前さんやったら気付いてくれるはずや、、
心拍数がモノを言う
(素直に、なりたいんやけど)(初めての彼女、やし。)(どうすればええんかわからんのが悔しい、、)