実力者彦星



「もし真田が彦星なら川を意地でも渡ってきてくれそうだよね」

「…え?」


だからぁ、とまた説明を始める友達。今日は七夕という年間行事の1つの日だったみたい。

そしてその友達はあろうことか私の、その、彼氏…が彦星だったらの話をしている。

「そう…かな?」

「絶対そうだって!泳ぐか、もしくは川を石かなにかで橋とか作って必死に名前に会いにくるって」

「そんなことない、と…」
「俺もそう思うな」

「ゆ、幸村くん!?」

同じクラスの幸村くんがいつの間にかこちらに来ていて同意した。

「真田は名前ちゃんにベタボレだからねー」
「そんなことないよ…?真田くんの一番はテニスだし、私はそれには勝てないってわかってるから…」
「ってな感じなのよー。幸村どうにかならない?」
「だ、だって事実…!」
「ねえ、部活中の真田知ってる?」
「え?」

話の切り替えでなぜか幸村くんは真田くんの部活中の話を持ち出した。

「え、なんかあるの?」

「ちょ、きいちゃ」

ダメって言おうとしたときに幸村君はあるよ。なんてサラッと言った。

それがもし本当だったら私が邪魔してるんだ、と思ったから聞きたくなかった。

「真田と名前ちゃんが喧嘩したときは酷かったなあ…」
「え?名前喧嘩したことあるの?」
「……、うん…」
「サーブは力み過ぎてアウトになったり赤也にはやたらと怒鳴ったり、あと」

「やめろ、幸村」


頭にポスッと大きな手が私の頭を撫でた。

「さ、なだ…くん?」
「彦星のおでましかい?」
「幸村、」
「はいはい」

「あ、アタシはちょっと用事がー」
「え、?」

友達は真田くんの顔をチラッと見て顔がスッと青ざめてそそくさと去っていった。

そして幸村くんがこう言った。

「あ、そうだ、真田がもし彦星なら織姫である名前ちゃんと川で遮られたら、どうする?」

思わずドキリとした。迷惑になっていると知ってしまった、真田くんの答えを聞くのが怖い。とっさにそう思った

「わ、わたし…」

逃げ出そうとした。
だけどそれは真田くんの手によって遮られた。

「泳ぐ。」
「っ!」
「名前を障害だと思ったことはない。むしろ支えられているとさえ思う」
「ノロケ?困るなあ」

じゃあ、俺はこれでと幸村くんはその場を去っていった。

この場に残ったのはわたしと真田くんだけ…

き、気まずい



「あ、の…」
「…幸村の言っていたことは合っている」
「え、」
「名前に、その、心底惚れているのは、事実だからな。」


真田くんは、恋と勉強と部活、みんな両立できてるんだから心配いらなかったんだ。


実力者彦星
(泳ぐって大きな川なら大変、じゃない?)(む、成し遂げてみせる)((た、たくましい…!))
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