ふたりのせかい



「うーっす」
「遅いですよ仁王君」

今日は珍しく真田くんが少し遅れるからといってだらけていいという意味ではありませんよ!?

とグダグダと説教を始める柳生。どうしてこう、うちの部には口煩い奴等ばっかりなんじゃろう…?

朝から説教されたらやる気がなくなるもんじゃ

そういや、

「そうじゃ、柳生。赤也と名前はどうしとる?」
「仁王君はまず私の話を聞きましょうか」
「プリッ それよか奴等じゃ」


昨日の夜10時から俺と赤也と名前とでオンラインのネットゲームをやっとった。俺はレベルアップしたところで落ちたが奴等は続けたんじゃろうと思っとったんじゃが…

「来てますよ。仁王君達が来る少し前から」
「は?」

来とるん?


「そちらの部屋に…」
「行ってもよか?」
「聞いてますか?仁王君。説教はまだありますよ?」
説教とか知らんぜよ。
柳生を押し退け隣の部屋の扉をあける。


「…やーぎゅ」
「なんですか」
「仲良く寝とる」

そんなはずは!と焦る柳生を少し黙らせて2人に近付く…


「おふたりさーん」
「んぐ、」
「むぅ…」


…なんじゃこいつら。俺の声を聞いた瞬間に穏やかだった顔を歪めてさっきの言葉を発した。

いかんいかん。落ち着け俺。


「なにしてるんですか!?」


柳生の声でやっと自分がしていることに気付く。
自分が奴等の頭を鍛えた握力で潰そうとしていることに。ああ、このままバカが消えればいいと思うんじゃが。


「あでででで!」
「いたたたた!」

「なにするんッスか!?」
「なにするんですか!?」
「声揃えて言うことじゃなか」

ぶーと2人そろって口をつきだす仕草はもはや中学生ではない。
双子のようにタイミングが揃ってる。さすがとしか言えん。見習わんといけんの。


「だってねー赤也」
「だよなあ名前」


2人は幼馴染みらしく(ちなみに2人とも2年じゃ)今でも一緒に寝たり抱き付いたり、思春期の男女とは思えない行動を普通になす。

今だって寄り添って手を繋ぎながら寝てたぐらいじゃ


「あ、そうそう、仁王先輩が落ちた後にやったら強い敵がでてきたんスよ」
「そーなんですよ!赤也と2人で頑張ったんですよ!?しかも倒したんですよ!凄くないですか!?」

「そーじゃなーいい子いい子ー」


小さい子供のように褒めて褒めてと言わんばかりのキラキラした目で俺を見るもんだから頭を撫でてやったら2人揃って眠たそうに目を閉じていく、ちょ。


「おまんら何しとるん」
「何って、」
「寝るんですよー」


ここは部室。しかも机とパイプ椅子しかないというんにどうやって寝るんじゃこいつらは…



「仁王君?もういいですか?れんしゅ…う」


柳生のメガネがずれて俺とよくに似た目が見開いてるのがよく見えるとか冷静に考えとる場合じゃなか!

2つパイプ椅子を並べて座りながら寝ていた体制からちゃくちゃくと違う体制へ変えるもんだから柳生もメガネを落としかけとる。



「おやすみッス」
「練習が終わったら起こしてくださいね」

「待ちんしゃい、」
「…なんスか」
「早めに用件すましてください」

「今の体制を詳しく聞いてよか?」
「別に普通ッスよ」
「誰でもしますよね?」
「せん。」
「普通にパイプ椅子に俺が座って、」
「私がその上に乗ってるだけですけど?」


じゃあ、おやすみなさーいと一言残して2人抱き合って寝始める。

ふたりのせかい
(理解できん!)(…は!仁王君、ほら、練習行きますよ!丸井君も、ほら!)(やぎゅー、おまん変わっとるのぉ)(仁王君に言われたくありませんが?)
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