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※裏ではないけど下ネタ連発
※夢主がサキュバスという特殊な設定
※××××には多種多様な効果音を入れてお楽しみください



なんだか最近、食事にあまり身が入らない。

ちょっと前までは、一日何人喰ったってヘッチャラで。喰っても喰ってもいくらでもお腹は減ったから、夜が明けるまで、マジ性の無双乱舞って感じで。ほら私エリートだし、可愛いし、入れ食いだからさ。

ちなみに人間の男の精子は、サキュバスのエネルギー源になるだけじゃなくて、天使様や上級悪魔とかの薬にもなったりする。だから夜が終わって天界へ戻ると、過剰な分を胎から取り出して、それを売って生活をしているんだ。ほら、人間と同じでさ、こっちでも生きるために税金みたいなのがかかるわけよ〜。マジだるいよね。エリートなんだけど。

そういうわけで、エッチは食事であると共に仕事でもあり、基本ヤればヤるだけお得なんだけども、最近の私はあまり食欲が無くて、これが続くとちょっとまずいかなという気はしてる。人間界で言うなら、営業トップ成績ってやつだからさ、私。
まぁエリートなので、どんだけ成績が落ちても、夢魔コミュのお局サキュバスから小言を貰うなんてこと、無いと思うんだけど。
閑話休題〜。

それより原因よ、原因。
原因がわからないのでは解決もできない。
なんだろうな。変な男でも喰ったっけなぁ。そんなヤバイやつ、ここ最近いなかったと思うけど、いかんせん食べた男なんてすぐ忘れてしまうしな。
え、人間だって、一週間前に何食べたかなんて覚えてないでしょ?





喰うだけ喰ったあと(といっても一人分喰うだけの余力は残しつてるんだけど)天界に戻る前に手嶋純太の元を訪れるのは、もう日課になってしまった。
数えるのもやんなっちゃったけど、純太のパジャマが昨日半袖に変わってたし、ここに通いだしてそれなりの日数が経ってるはずだ。
もちろん私はエリートなので、惰性で手を緩めたりとかはしない。

毎日毎日、全力で純太を誘いにいく。


「ご主人様、起きてニャン」


本日のコンセプトは猫だニャン☆

黒い猫耳に鈴付きの首輪、両手には肉球ミトン、そして艷やかな毛並みの尻尾。もちろん猫耳も尻尾も本物だし、なんなら今の私、半分猫。リアリティはとことん追求していくのがエリートクオリティだからね。
ちなみに尻尾は性感帯です。お約束だよねっ☆

目を開けた純太が、自らに跨ってニャンニャンポーズを決めるケモ娘を見て、「おー……今日はそうきたか」となんとも言えない感じに曖昧に笑う。私は彼に身体を擦り付けるように密着して、「ご主人様ぁ」って耳元で囁く。

「名前、ご主人様のおっきなアレで、エッチな躾けをされたいニャン……♥」

猫にマタタビ、サキュバスに×××。
発情期のケモノの勢いで、耳たぶをかぷりと甘噛みしたら、両手で肩を掴まれてガバッと引き剥がされた。

「それはダメ」

顔がちょっぴり赤い。
笑顔も強張ってて、心なしか余裕を無くしてるようにも見えるけど。

「にゃぁん……今日もしないニャン?」
「しないよ」
「ご主人様は名前のことが嫌いニャン?」
「嫌いじゃないよ」
「じゃあ猫がお嫌いニャン?」
「好きだよ。…超可愛い」

純太はおずおずと手を伸ばすと、私の頭に触れた。ふわふわと優しい手つきで撫でたかと思えば、猫耳を指先で擦って、「すげー、本物の耳だ」と質感を楽しんでる。
猫の本能なのか、ただ撫でられてるだけなのに、めっちゃ気持ちよくてゴロゴロと喉が鳴ってしまう。
そんな私に、純太はくすりと微笑むと、本当の猫にするみたいに顎の下をくすぐった。「よしよし」とあやすように言われて、「にゃあん…」と甘えたような、まさに猫なで声が出る。尻尾を勝手にぶんぶん振っちゃう。

……って、おいおい。
なに流されちゃってんのよ、私。本物の猫じゃないんだから。

「ご主人様ぁ……」
「ん?」
「名前のことも猫も嫌いじゃにゃいのに、どうして拒むのにゃ……」
「インターハイまではしないって自分の中で決めたから。いつも言ってるだろ?」
「じゃあ、そのインターハイってやつが終わったらしてくれるニャン?」
「それは……その時になってみないと分からない」
「は?? ざけんななんだよそれ、絶対する気ないやつの答えじゃん」
「猫語、取れてるぞ」
「にゃーん……名前、ご主人様の××××ミルクが欲しいニャン……お腹空いたニャン……♥」
「だーめ。我慢」
「うぅ……」

やっぱダメかー。





疲れてる疲れてるって純太は言うけど、もう腰が振れないほどバッテバテに疲れてるとかでは無いと思うんだよね。
もちろん不能とかでもないよ。それだったらxxxの透視で真っ先に気がつくし。純太の身体は健全そのものだ。

これは予想なんだけど。
多分純太は「サキュバスとエッチする=堕落」だと考えてるんだと思う。そういう道に落ちちゃったら、今までコツコツ積み重ねてきた努力とかがパァになっちゃうって、思ってるんだよねきっと。そんなことないんだけどな。

だとすると、私に出来ることって、地道に説得をし続けるか、そんな信条を破らせるぐらい破壊力のあるシチュエーションを引っさげて強引に悩殺するぐらいしかない。
劉備だって、当時自分よりずっと格下だった諸葛明を口説き落とすのに三回も出向いたんだ。私だって諦めずに何回でも行ってやる。


そう決意を新たに、今日は女教師シチュで行こう……と作戦を練りながら純太の部屋へ向かうと、その日はいつもと様子が違った。
部屋の灯りは落ちているけど、勉強机のライトは点いている。
なんと彼は起きていた。机に向かって、カリカリとノートにペンを走らせている。

こんなこと初めてだったので少し驚きつつ、純太の周りをうろちょろ飛び回る。背後からノートを覗きこめば、これは……なんだろ。歴史? かな?

しかし、拍子抜けだ。サキュバスは寝ている人間にしか干渉できないから。せっかく色々考えてきたのになー。
帰ろうかとも思ったけど、しばらく待ってみることにした。本棚を物色して(ここにエロ本やAVの類いが無いことは随分前に探索して把握済み)スポーツ漫画をいくつか選んで、ベッドに寝っ転がる。

(………お)

時間にして1時間も経たないぐらい? 純太が机に突っ伏して寝オチした。
漫画はいいとこだったけど、最重要案件はこちらだ。しめしめと近付いて、彼のワカメ頭に手をかざす。

……『同調(リンク)開始』。

もう夜明けが近くて時間がそれほど無いため、女教師作戦は明日以降にとっておこう。
環境も服も特に何も弄らず、私の姿を認識できるだけの状況にして、純太の肩をそっと揺らした。

「ん……」
「はーい☆おはようございますお兄さん。お目覚めに一発いかがですか〜? 今ならなんと待ち時間無し、しかもタダでご提供できちゃいますけど〜」
「名前さん……」
「エリートサキュバス名前ちゃんは勉強頑張る若者のつよ〜い味方! 夜一人で勉強してるとムラムラしてきちゃうよね、分かる分かる。問題が難しくて、解けなくて××××イライラしてきちゃうよね。その鬱憤、お姉さんの身体に叩きつけてみない? 教科書の裸婦像で抜くよりよっぽど健康的だよ?」

純太は重たい目蓋でぼんやりと私の話を聞いて、軽く吹き出すと、「そんなことしてねぇから……」と力の抜けた苦笑を見せる。それからくぅーっと大きく伸びをして、首を回した。

「あー。名前さんがここにいるってことは、オレ、今寝てるってことだよな」
「ザッツライ。机に突っ伏して爆睡中です」
「マジか。寝ちゃったか〜…不覚」
「当たり前でしょ、今何時だと思ってるのよ。どうした? いきなり猛勉強しだして。心境の変化でもあったの?」
「いや、明日定期テストってだけ。しかも苦手な教科でさ。最近勉強の方は疎かだったから、久しぶりにオールでもしないと本格的に酷い点数になりそうで」

なんでも、あまりに点数が低いと「赤点」というのになってしまうらしく、そうなる追試になってしまい、もれなく部に迷惑をかけることになるんだって。
「ま、赤点は大丈夫だと思うけど、部長が赤点ギリギリ回避ってのもかっこつかねぇしな」と、純太は椅子の背にもたれかかって、おどけたように言う。
伏せた目元には、明らかに疲れが滲んでいた。

「……頑張るのね」
「はは、悪あがきってやつだよ。前からきちんと取り組んで来なかったオレの自業自得」

自嘲するように軽く一笑すると、「そういう訳で、悪いけど起こしてくんね?」と純太は私を見た。「ああ、今日もエッチはおあずけで」なんて軽いノリで付け足しながら。

……。
なんか。
よくやるよなぁ、ほんとコイツ。

やりたくないことでも、やりたいことのために、これだけ頑張れるんだもんな。
人間にとってはそれって当たり前なことなのかもしれないけど、やりたいことがヤりたいことなサキュバスからしてみれば、純粋にすげーって思う。
……つか、私が知ってる人間なんて、みんな欲に流されやすい弱くて愚かな奴らばっかだったから。こんな真面目なやつが実在してるんだなって、しみじみ感心してしまう。

私はゆっくりと首を横に振った。

「だーめ。オールはやめときなって。普段規則正しく寝てるのにいきなりそんなことしても、明日体調崩すだけだよ。私と寝るか、ベッドで寝るか、どっちかにしなさい」

そう言うと。純太は驚いたように眉を持ち上げて、まじまじと私を見つめた。

「……何よ」
「いや」

目を逸らして、なんでもねーよと言う。なんだか嬉しそうに、口元をニヤニヤ緩ませて。

と思ったら、唐突に「あ!」と叫んで手のひらを打った。

「今オレ寝てるんだよな。だったらこの状態で勉強すれば、それって睡眠学習になるんじゃないか…!?」
「睡眠学習? なにそれ」
「脳って、寝ている時の方が色んな事を記憶しやすいらしいんだ。それを利用した学習方法のことなんだけど……まぁとにかく、今のこの状態で勉強した方が、起きてる時より捗るってことだよ」
「ふーん」

よく分かんないけど、返事をしておく。
純太は「そういうことだから、やっぱ起こさなくていーや」と言うと、口笛でも吹きそうなノリで「そうだ、名前さん勉強付き合ってよ」と提案してきた。
思わず「はぁ?」と不細工な顔になってしまう私。いやいや、私が人間に教えられることなんてエッチと三国志ぐらいしかないわ。

「言っとくけど、セックスの仕方を教わりたいわけじゃないからな?」

……クソッ、先に言われた!
純太のやつめ、私の言動を読めるまでになってきたか。

「じゃあ何すりゃいいのよ」
「この本の、このページから、一題ずつ読み上げてくれるだけで構わない」

と、渡されたのは問題集みたいな本。
表紙には……えーと、『世界史一題一答』かな?

「なんで私が、人間の勉強の面倒なんか……」
「あぁ、そうだよな、悪い悪い。サキュバスには日本語の文章なんて読めないもんな?」
「あ? 馬鹿にすんなよこのやろ。この程度の文章なんて楽々読めるわ」

なんせ私はエリートだからね。
見下しながら言い放つと、純太は顔を背けて小さく肩を震わせたあと、

「そいつは頼もしいよ」

と、再びこちらに向き直ってにやりと笑った。
……? 何だよ、今の一瞬の間は。





「1859年のイタリア統一戦争で、サルディーニャ王国がオーストリアから獲得した地域は?」
「えー……なんだったっけ」
「はいブー。正解はロンバルディア。こんなの覚えるの簡単じゃん、『いやらしくごっくん(1859)、オーストリアさんのロンバルディア、すっごくおいしい……♥』で覚えよう」
「最悪の覚え方だな……」
「いいから。私のエロ顔と共に覚えなさい。はいもう一回行くわよ、『いやらしくごっくん………


「――太平洋岸と東部が連結され、アメリカに経済的統一をもたらすことになった大陸横断鉄道ができた年は?」
「えーと………パス」
「1869年。これも簡単ね。『太平洋岸と東部が一発シックスナイン(1869)してアメリカウッハウハ』これで覚えなさい」
「妙に覚えやすいから困るんだよな」
「あ、スエズ運河も1869年ね。こっちは『エジプトとフランスが一発シックスナイン』ね、はい復唱」
「エジプトとフランスが一発シックスナイン…」





「――つ、疲れた……」

試験範囲のページまで終わった時、純太はなんか、勉強始める前よりげっそりしていた。

「お疲れ様。だいじょぶ? おっぱい揉む?」
「結構っす……」

私の方を見ないで、手をヒラヒラと振る。
なんだよ素っ気ないな。今なら精液の見返りなしにパフパフさせてやったのに。

それにしても、意外と勉強に付き合うのは楽しかった。内容はチンプンカンプンだったけど、不思議と気分が乗ってきて、取っておこうと思ってた女教師コスも披露しちゃっていた。純太にはあんまり受けなかったけど。

「限界っぽいし、もう勉強はやめて寝たほうがいいんじゃない?」
「んー……うん」

はっきりしない返事を寄越して、彼はペンをくるりと回す。
それから、ふと思い出したというように「そういえば、前から気になってたんだけど」と口を開いて、私を見た。

「名前さんの名前って、漢字ってどう書くの?」

何気なくぶつけられたその質問に、虚をつかれる。

「……そんなの無いけど」
「え? じゃあ全部ひらがな?」」

頭を振って、「っつか、日本語表記とか無いし」と言うと、純太は「和名なのに?」と目を丸くさせる。

「そもそも人間と違って、名前に大した意味合いなんてないの」

唐突に始まるよ!
よく分かるサキュバス(インキュバス)の作り方〜〜!!

@まず親となるサキュバスとインキュバスを用意します。
Aサキュバスが搾りとった人間の男の精子を、胎から取り出し、インキュバスが人間の女に植えつけ受精させます。
B一晩のうちに母体で成長した子を取り上げます。この時、別に腹を割ったり股を裂いたりせず、天界パワーでふわっと取り出すので、人間の女は安心してください。まぁ子供を産む夢ぐらいは見るかもしんないけど。

以上! ちなみに取り上げた時は赤ちゃんだけど、大体3日程度で大人と同じような容姿まで成長します。

そんで、肝心の名前だけど、その精子を提供した男の姓と、母体になった女の名前を取って決まる。インキュバスなら男女が反対。
だから本来は漢字表記があるんだろうけど、まあ天界では使えない文字だし。読みだけ貰う。

私の場合、精子と母体が両方日本人だったってだけで、これがもし国籍が違ったら「山田ジョセフィーヌ」とか「アンソニーよし子」とか売れない芸人みたいな名前になってただろう。

つまり、名付けに意味なんて無いし、親という概念もあるっちゃあるけど、人間と比べたらずっと希薄な関係性だ。

……と説明すれば、純太は「なるほどなぁ」と興味深そうに唸った。

「じゃあ、自分の名前を書く時はどうしてるんだ? 文字を書く概念がそもそも無いのか?」
「天界舐めんな、あるわ。あんたらには分からない共通言語があるわ」
「へぇー! 気になる」

純太はうきうきと、「これに書いてみせてよ」とノートとペンを差し出した。
気が進まないながらも、しぶしぶ隅っこの方に名前を書いてやる。うお、人間のペン、使いづら。
純太は私の天界語を見て、「すげェ! 全然読めねえ」と何故かテンションが上がっていた。キラキラと目まで輝かせて、変な奴ー…。

「でもさ、せっかく和名なんだし、漢字もあった方がいいだろ」
「……あんた私の話聞いてた? 要らないんだってば、そんなの」
「聞いてたよ。要らないんなら、オレが勝手に決めたっていいよな?」

純太はまっすぐと私を見つめる。珍しく強引な物言いと有無を言わせぬ視線に、一瞬息が詰まる。
そんな意味のないことをして何になるんだと思ったけど、ほんの少しだけ気になってしまった私もいて。
沈黙を了承だと受け取ったのか、純太は「よし」と言って、再び机に向き直った。そしてペンをくるりと回しながら、「何がいいかなー」と考え込んでいる。
その横顔がやたら楽しそうで、ますます変な奴だなという念を強めた。つか、勉強はいいのかよ。

しばらく、ああでもないこうでもないと迷ったあと、純太はノートに3つの名前を書いて、私に見せた。

「この中だったらどれがいい?」
「え? これ全部同じ読みなの?」
「そうだよ」

てんでバラバラの文字なのに。
日本語って難しいよね。最近、漢字も結構いけるかなって自信ついてきたけど、まだまだ道のりは遠いな。

「どれでもいいよ。純太が決めて」

本当は、真ん中のが一番いいかなって思ったけど、さっきまで要らないって言ってた手前そんなこと言うのが恥ずかしくて、つっけんどんに答えてしまう。

「そう? んー……じゃあ、真ん中のがいいかな。一番綺麗だし」
「…………」
「……名前さん?」
「――い、いやっ、何でもない!」

図らずも以心伝心みたいになってたっつか、偶然かもしれないけど私の一番を純太も一番いいと思ってくれたのが、何故か妙に恥ずかしくて、ムズムズする。
「ふーん、まぁ、いいんじゃない」って、さっきからツンデレのツンしか無い人みたいになっちゃってるのに、純太は私のその返事を聞いて、パアッて花が咲くように、本当に嬉しそうに笑うんだ。

「決まりだな。苗字名前、いい名前だ」

………なんつーか、調子が狂う。
なんでそんなことを思うかも分からないんだけど。

「ほら、これ」

不意に渡されたのは小さなメモ用紙。
書いてあるのは『苗字名前』の漢字表記。
純太を見れば、「記念に」と言って、へらっと笑っている。
……こんなの貰ったって、どーしろって言うのよ。なんて思ったけど。

「………ありがと」

心とは裏腹に、いや裏腹でも無いかもしんないけど、上のお口からは素直に感謝の言葉がこぼれ落ちていた。
純太は驚いたように瞬きを繰り返したけど、すぐに「どういたしまして」と目を細めて優しく微笑む。

「……!!」

その笑顔にまた、訳がわからない焦りというか、心臓の裏側をくすぐられたみたいな動悸が襲ってきて。
私は慌てて顔を逸らしながら、「もうすぐ夜が明けちゃうから私は帰るけどっ、あんたもいい加減寝なさい!」と声を張る。いや、もう寝てんだけども。
純太は私の動揺には気が付かず、「ほんとだ、もうこんな時間か」とあくびをしながらのんびりと言う。

「じゃあ、勉強付き合ってくれてありがとな。おやすみ、名前さん」
「……おやすみ、純太」

そう言うと、純太はそのまま机に突っ伏した。彼が夢の世界で眠ったことで、私との接続も切れた。
ただいま、現実世界。といっても、目に見える風景は何も変わらないんだけどね。

ふわりと勉強机まで寄って、腕の下敷きになってるノートを引っ張りだすと、天界語で書いた私の名前も、さっき純太が書いた名前も、そこに残っていた。私の谷間ポケットにも、貰ったメモがちゃんと挟まっている。……よかった、と少しだけ安堵する。

「っよいしょ、っと」

キャスター付きの椅子をごろごろ動かして、ベットのとこまで来ると、純太の身体を無理やりそこに転がして、ちゃんと姿勢まで整えてやって、布団をかける。
あんな姿勢のまま寝ても疲労取れないでしょ。なんて優しいエリートなんだろう、私って。

「……試験頑張れよ」

小さく呟いて、彼の頬を軽く抓る。
いい夢でも見てんのか、少年はやたらと幸せそうな顔をして、眠っていた。
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