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超絶エリートサキュバスちゃんは
手嶋純太の精が欲しい!


※裏ではないけど下品な下ネタ・単語連発
※夢主が夢魔(サキュバス)という特殊な設定
※「岩瀬チャン」に関する捏造
※××××には多種多様な効果音を入れてお楽しみください


全て了承した上でお読みください。

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私は超エリートサキュバス苗字名前ちゃん。今日もこの悩殺ボディでロンリーな夜を過ごす男達から精をエッグいほど絞りとってやるの!

「何プレイしてもお金は頂きません☆ シチュエーションから私の姿格好まであなたの望むまま。もちろんヤった後に魂取ったりとかしないし、いくら出しても悪影響はありません。ノーリスク・ハイリターン☆」
「わー、ほんとにあるんだな、こういうの」
「というわけで、私とエッチなこと、しましょ?」

にこりと微笑んで首を傾げれば、うる艶ロングな黒髪がさらりと流れる。
はっはっは、可愛かろ? 童貞くん。
人間界には「小悪魔フェイス」とか「小悪魔メイク」とかって言葉があるらしいけど、その語源、多分私だわー……なんて思いながら目を細める。

しかし、次の瞬間。
ワカメくんが放った一言は、私の六本木高層ハイタワーの如しエリートサキュバス人生を、根本から激震させた。

――疲れてるから、いいよ。と。

言いやがったのだ。

「………は?」

今。
なんつった? コイツ。

「悪い、他当たってくれ。疲労困憊なんだ。1秒でも長く寝たい」
「え? いやいやいや! なにくたびれた中年親父みたいなこと言ってんのよ、あんた高校生でしょ!? HIROよりEROを取るお年頃でしょ!」

がくがくと胸倉を掴んで揺さぶるが、「今日レースがあったから」とかなんとかムニャムニャ言うだけで、芯の無いもやしみたいだ。

「ほら! おっぱい触っていいから! おにーさーん! 起きてー! いきのいいおっぱいですよー!」
「ごめん、また来て……スヤァ」


ま、マジで寝やがったコイツーーーー!!!!





その翌日。


「今日も疲れてるから、勘弁して」


……その翌々日。


「ごめん。また今度」


――苗字名前は激怒した。
必ず、邪智暴虐のワカメを除かなければならぬと決意した。

「ふ・ざ・け・ん・なーー!!!」

馬乗りになって胸倉引っ掴んで叫ぶ私に、ワカメくんは「あはは」と楽しそうに笑う。
対照的に、私はマジギレ。こめかみに青筋浮かんでると思う。

「あんた何なの!? どっからどう見ても健全な青少年でしょ!? オナってもオナっても物足りない年頃でしょ!? こんないい女がヤろうって言って3日もスルーするなんて精子が可哀想だと思わないの!?」
「精子が可哀想(笑)」
「あ? なに笑ってんだよオメーも元を正せば精子だろうが、もっと精子に真摯になれや」
「口が悪いなー。それが本性?」

オレ、清楚な子の方がタイプなんだけど、と言われて口を噤む。
なんだ? からかわれてんのかこれ。
たかが10幾つの人間のガキに、この私が。
こんなこと、長いサキュバス人生で初めてだ。

「なあ、お姉さん名前なんていうの?」
「……は?」
「ああ、オレは手嶋純太な」

教えてよ、名前、とへらっと笑われる。

「……苗字名前」
「へぇ、意外と普通の名前。つか和名なんだ。名前さん、ね」

憶えた、と妙に嬉しそうに頬を緩ませるワカメくん。もとい、手嶋純太。
……って、なんだこれ。なに主導権奪われてるんだ、私。
ハッとして、「そんなことより!!」と顔を近づける。

「ホラ、さすがにもうムラムラしてきたでしょ!」

サキュバスの特性その@
特に何もしなくても身体から男をその気にさせるエッチなフェロモンが出る!

わざとらしく腰をむずむず動かして、「私はさっきからずーっとエッチな気分だけど〜」と、物欲しそうな顔をしてやる。
オラ、エロかろう。勃てや!

「……あー、ごめん。今日はほんとに、そういう気分じゃないんだ」

純太は申し訳無さそうに「疲れてるからさ」と眉を下げて笑う。×××もピクリともしない。

……どうやらほんとにする気がないらしい。
ムカつくけど、そろそろ怒りすら込み上げなくなってきて、私は掴んでた胸倉を離して解放してやる。
そして、人差し指で純太の胸のあたりをぐりぐりしながら、「疲れてる疲れてるって、あんたいつも何してるわけー?」と訊く。

と、純太は何故か少し嬉しそうな顔をして、答えた。

「部活で毎日自転車漕いでる」
「……なにそれ。毎日チャリ漕いでどっか行ってるの?」
「いや、そうじゃなくて、自転車漕ぐ部活。ロードレースっていうんだ。あとチャリじゃなくて、ロードバイクな」
「ふーん。そのロードバイク? ってやつで、毎日身体を酷使してるワケね。エッチする気にならないぐらい」
「まあ、そんな感じ」

ロードバイクは分かんないけど、自転車の形状ならなんとなく分かる。
……ひょっとして、乗りすぎて×××の機能がおかしくなっちゃったとか? なんか座り心地悪そうってか、固そーだもんな、あの乗るとこ。

「てゆーかあんた、スペシャリストだったりするわけ? その、ロードバイクの」
「はは、まさか。うだつの上がらない平凡な選手だよ」

情けない顔して「頑張ってはいるけど」と純太は笑う。

「え? うだつの上がらない平凡な選手なのに、そんな頑張ってるの? 虚しくならない?」

生まれも育ちもエリートなサキュバスだから、あんましそういう気持ちが分かんないのだ。
本気で疑問でそう問いかける私に、純太は「ひっでぇなー」と乾いた笑いを漏らした。

「そう思う時が全く無いわけじゃないよ。だけど、どんなに現実を突きつけられて、残酷に見放されても、やっぱ好きなんだ。自転車が」
「………」
「あと、オレはひとりじゃないから」

仲間がいるから辛くても苦しくても立ち上がれるのだと、少年は瞳の中に星を散りばめて、私に語った。

「……なるほど」

呟く。
なーんか、分かっちゃった。

これか。これなんだな。

私がこいつに固執する理由。もちろん3日間も誘いを断られてムカつくからってのもあるけど、もう一つあるんだ。

コイツ、多分、将来大物になる。

サキュバス特性そのA
xxxの形を見ただけでそいつのことが大体分かる! (あ、ちなみに服を着ててもxxxの形は分かる。xxxの透視も私達の特性。)

初めて見た時から、なんとなく、大成するxxxの形してんなーって思ってた。けど今の話を聞いてそれが確信に変わったし、自転車で大成するのかそうじゃないのかは分かんないけど、とにかくすごいやつなんだって肌で実感した。
3日連続で疲れたと言われた時は本気で日本の未来を憂いたもんだけど、なかなかどうして見込みのある若者じゃないか。3日も連続で私の誘惑を振り切れるって、ほんと、すごいぞ。

うむ。
こうなったら、是が非でもヤりたくなってきた。
コイツを食えば、将来的に『アゲマンサキュバス』の功名得られるかもしれないし。

あわよくば「手嶋純太は私が育てた」とか言ってみたいよね。
最近同僚が「あたし◯◯◯◯(超有名若手俳優。炎上不可避だから名前は伏せる。)の精を食べたことあるんだよね〜」ってめっちゃ鼻高々に自慢してきてうざいし。

……あと単純に、美味そうなんだよね。
純太の精液。
じゅるり。

「分かったわ。今日のところは、これで引いてあげる」

ふわりと宙に浮いて、純太を見下ろす。じゃーねと笑いかけて、バサリと漆黒の羽を広げて、私は窓から優雅にその場を後にした。

まあ、ぶっちゃけ、私の超絶テクにかかれば、どんなに疲れていようがお構いなしに元気にしちゃえるんだけど。強制的に劣情させちゃうスキルとかもあるんだけど。でもそうやって無理矢理絞りとった精と、自分から積極的に××××した〜い!と望んで生成された精では、美味しさが違うんだよね。低脂肪牛乳と生クリームの原液ぐらい違うの。

あと……単に私のプライドが許さない。男の方からヤラせて下さいお願いしますッってみっともなく縋り付いてくるぐらいじゃないとさ。エリートとしてはね。

というわけで、ふわふわと深夜の上空を舞いながら、私は策を練る。
今まで食った男共はみんな、この顔と身体だけで目をハートにさせて飛びついてきた。だから頭なんてほとんど使ったことないけど。

悪いが私は馬鹿じゃない。超エリートなのだ。
純太を籠絡する策なんて、早漏の男がイくより早く思いつけるのよ。





私達の活動時間は基本的に夜。みんなが寝ないと始まらない。独り身の寂しい男の夢に現れて、一発エッチして、行き場のない可哀想な精子をたんまりごっそりと頂いてていく。だから、サキュバスって夢魔と呼ばれることもある。
あ、でも、ちゃんと実体はあるんだよ。人間側でそれが「夢」って形で処理されるだけで、エッチだって実際にする。

じゃあ、昼間は何してるのかっていうと。天界って呼ばれるところで上級悪魔さん達の下っ端としてバイトしてるやつもいるけど、私はエリートだから特にそんなことする必要はない。夜の夢魔活動だけで十分不自由なく生きていける。
だからまあ、夜に向けて身体を休めたり、ジムに行ったり? 夢魔コミュニティの同僚と適当に駄弁ったりして、過ごしているんだけど。


(いや〜、眼福眼福)

ふわふわふわ。私が今漂っているのは、とある高校の廊下である。今は昼下がり、授業は無いのか多くの生徒達が教室の外に出て、友達と談笑したりしている。ちなみにっつか当然だけど、私の姿は人間には見えない。

つーか、マジ日本の女子高生の制服ってエロいよね。考えたやつ、大変な変態だよ。
私も今の衣装も、黒くてピチっとして身体のライン丸分かりな超エロ可愛いワンピだけど、ちょっとJKの制服要素取り入れようかな。スカートとかプリーツにして、ブラウスにして、おっきなリボンとかつけて。そんでへそ出しミニスカとか、どう?
あーでも私の専門は童貞若人だし、あんまりその路線は受けないかな〜? いやでも日本の男ってみんなロリコンみたいなとこあるって、先輩サキュバス言ってたし。

そんなことを考えながら教室から廊下、廊下から教室をうろうろ見回っていると……見つけた。
手嶋純太。今日はこいつを見張るために、この総北高校にやってきたのだ。

「やっほー純太、遊びにきたよ〜」

なんて、聞こえるわけがないんだけど。
ターゲットの彼は、教室で何か書き物をしていた。失礼して、ちょっと覗き込ませて頂く。私はエリートだから、日本語も読めるのだ。
うーんと……勉強じゃないな、これ。予定表? まあ、十中八九例のロードレース絡みだろう。

「おい、手嶋ぁ」

と、見守っていると一人の男の子がやってきた。「東戸」と純太が声を上げる。
彼は純太の前の席に腰掛けると、ニヤニヤと口元を緩ませて純太を見る。

「わざわざ出張か? つかなんだよ、その顔」
「ほら、これ」

彼が机の上に置いたのは、赤い長方形の箱。
そこに印刷されているのは……えーと。KitKatu?
わっはっは、アルファベットだってお手のもんですよ。エリートですから。

「差し入れだ。女子バの岩瀬チャンから」
「え?」
「チャリ部、もうすぐ県予選が近いんだって話をこの前したんだけど、そしたら今日これ手嶋くんに渡してーってオレんとこ来てさ」
「おー……まじか」

純太はそのキットカツを手に取ると、裏返した。
そこには小さいけどメッセージ欄があって。

「『県予選頑張ってね。部活引退したら今度こそカラオケ付き合って!』……」
「良かったな、手嶋」

あれは脈ありだぞ、とヒガシドくんがコソコソと声を潜めて言う。「冷やかすなって」と苦笑する純太の頬もちょっと赤い。

………。
い〜いこ〜と聞〜いちゃった♥

「岩瀬さんにお礼、言っといて」
「そういうことは自分で言え」
「……だよなぁ」

参ったな、と前髪の辺りを掻く純太に「にやけが隠しきれてねぇぞ」と言うヒガシドくん。それに便乗してヒューヒューと囃し立てる私。聞きたかった情報が収穫できて、もう大満足だ。

私の専門は童貞(できれば学生)なんだけど、思春期の青い若者を相手にしてるとたーまにいるんだ、「好きな人がいるからできない」って言うやつ。
ただまあ、ぐだぐだ言ってるのは最初だけで、すぐにフェロモンでその気になっちゃうし、そいつが望めばその好きな女の子ってやつに変身もできるから、そうなっちゃえば抗えるやつなんていないんだけど。
閑話休題。

純太はワカメだし、なんか口もよく回るし、パッと見軟派っぽい。でもそれは見た目だけだって、実は超真面目な努力家くんだってことが昨日よく分かった。

……つまり、私は純太もその「好きな人がいるからサキュバスとエッチなんてできない!」ってタイプだと狙いをつけたワケ。

なので、こうして学校へ来て、好きな女の子の情報を探っていたんだけど――あっという間に知ることができた。こうなったらもうこっちのもんよ。

やばいな〜〜私。冴えてるな。サキュバス界の諸葛孔明と呼んでくれ。

くるりと宙で一回転すると、私は早速その「岩瀬ちゃん」を探しに教室を出た。





「……完っ璧」

姿見の中には頬をピンク色に染め、うっとりとこちらを見つめる「岩瀬ちゃん」が映っている。当然これは私の変身した姿だ。
岩瀬ちゃん、素材がかなり良かったため、顔はほとんどそのままだし化粧もしてない。おっぱいはちょっと盛っちゃったけど、まあ気がつかないだろう。
しかし純太め、こんな普通に可愛い子が好きだなんて、年頃の男の子っぽいところもちゃんとあるじゃないか。そういうのでいいんだよ、そういうので。
ちなみに本人は隣のベッドですやすやと寝ている。そう、ここは純太の部屋です。

入念に外見のチェックをしたあと、「あー、あー」と声も変える。もうこれで100%岩瀬ちゃんだ。おっぱいの分を合わせれば120%かも。

寝ている純太の上に跨って、コツンと額同士を合わせる。

……『同調(リンク)開始』。

今この瞬間から、私と純太の世界は交じり合う。彼の五感は全て私の支配下に置かれ、私も彼の意識に深く入り込む。

熟睡していたらしく、純太はなんの夢も見ていなかった。好都合だ。
純太の部屋から真っ白な空間へ、真っ白な空間から総北高校の保健室のベッドの上へ。風景を造りこむ。ついでに、服もパジャマから制服に変えてやる。

そして、耳元で囁いた。

「手嶋くん」

純太の目がパチリと開く。

「ふふ、起きた?」
「え? 岩瀬……さん?」
「ごめんね、私……我慢できなくて」

はぁ、とエッチな吐息を漏らしながら、ブレザーのボタンを一つ、二つと外した。
え? シチュエーションが謎? 唐突すぎる? うるせえ! エロ漫画の導入だってこんなもんでしょ! エロに下準備なんて要らないんだよ!

「前からずっと、手嶋くんが好きだったの。いつも一生懸命自転車を頑張ってる、努力家のキミが」

純太は目を丸くして、瞬きを繰り返している。
見せつけるようにブレザーを脱ぎ、リボンを外し、ブラウスのボタンを上から外していくと、やっと状況を飲みこめてきたらしい純太が「っちょ、待って」と起き上がろうとするので、ここぞとばかりに抱きついて。

「好き……手嶋くん……」

頬を紅潮させて、瞳はうるうるで。フェロモンは全開。
甘く蕩けるシュガーボイスを耳に落とし込めば、彼の肩がひくりと震えた。

――来た。
肌で分かる。男が獣に変わる瞬間。
あともう少しで、そのスイッチが入る。

「私の処女。貰ってくれる、よね」

だって手嶋くんだって、私のこと好きでしょ?
至近距離で目を合わせて、くすりと微笑みかける。あとは駄目押しでキスをすれば――

「ダウト」

――完全に落ちる、と思ったのに。
私の唇には彼の人差し指が当てられていた。

「……は?」
「残念。岩瀬さんはオレのこと、てしじゅんって呼ぶんだよ」

手嶋は私の正体を見透かすようにこちらをじっと見つめたまま、「爪が甘かったな、名前さん?」と言ってニンマリと口の端を持ち上げた。

……。
え。

私の動揺はそのまま世界に表れて、どこかでピシリと亀裂が走る音がした。それは大きくなっていって、ガラガラと、隅の方から崩壊し始める。総北高校の保健室から、真っ白な空間へ。真っ白な空間から、純太の部屋へ。私と純太の服も、全部が元通りになる。
それは一瞬のことだった。

「おお、なんだこれ。すげー」
「………」

――屈辱。

それは超絶エリート人生を歩んできた私に、生まれて初めてもたらされた感情。

わなわなと身体が震える。ぶわりと身体が熱くなって、目に涙が浮かぶ。身体は欲情した時と同じような反応を示しているけど、全然違う、それを生み出しているのはぐつぐつと煮えるような怒りと悔しさと、経験したことないような恥ずかしさ。

「……なんでよ、馬鹿。ばっかじゃない!?」

思わず、純太の胸板をグーパンでぽこすか殴る。

「呼び方なんて細かいことどうでもいいでしょっ。あのまま身を任せてれば、あんたは大好きな岩瀬ちゃんとエッチできたのよ! 自分のことを好きって言ってくれる、めちゃくちゃエッチが上手くて若干おっぱいも大きい岩瀬ちゃんと!」
「それなんだけどさ。オレ、別に岩瀬さんのこと好きってわけじゃないんだよね」
「……。は?」
「まあ、可愛いし、ちょっと気になってた時もあったけど……それだけ。あんま接点もねぇし」
「……うそ」
「ほんと」

呆然とする私に、純太は「それよりさ」と、なぜか言葉の節々に喜びを滲ませながら、続けた。

「オレ……そのままの名前さんがいい」
「え?」

セックス、するなら。
こつんと額を合わせた純太は、私の拳にそっと手を添えて、子供っぽくからかいを含んだ口調で、そう言う。
だけど、その瞳には大人の男のような燻んだ光が宿っていて。妙な色気にこくりと息を飲んだ。
言葉を失う私に、彼は満足げにフッと微笑んだあと、「でも今はいいや」とベットに倒れこんだ。

「悪魔にたぶらかされて、身体に何か影響があったら困るしな」
「な……べ、別に何も悪影響は無いわよ! 安心安全、ノーリスクハイリターンって最初に言ったじゃん!」
「んー。でもオレ本で読んだんだよね。サキュバスとの淫行は健康に害を及ぼすこともあるって」
「そんなの嘘! 誰よそんなデマ書いたやつ! そいつ絶対×××××××!」
「はは。まあ、インターハイが終わったら考えるよ」

すっかり寝る気満々で目を閉じる純太に、慌てて「ちょっと待って、インターハイっていつ?」と訊けば「3ヶ月後ー」とのんびりした返事が返ってきた。

「ハァ!? 待てるわけないでしょ、そんなの! さっきちょっとヤる気だったじゃん、今よ今、今するのー! ねえ!」
「名前さん」

寝かせてたまるかと覆い被さる私に、パチリと目を開けた純太は、しー、と人差し指を私の唇に当てて。

「人間界じゃさ、我慢した分だけ何でも美味しくなるって決まってるんだ」
「……」
「だから、」

――おあずけ。
それだけ言って、純太は糸が切れたように眠ってしまった。

「……。ね、寝やがった……」

愕然としながら、呟く。
のろのろと身体を起こして、すやすやと眠る純太に一応布団をかけてやると、私は窓から部屋を出た。
なんだか飛行が安定しなくて、電柱にぶつかりそうになって、止まる。

「……ッ、生意気、生意気、生意気、生イキーーーッ!!!」

そして、叫んでいた。
深夜、眠りについた街の中に、私の咆哮が響く。

「なにが『セックスするなら名前さんがいい』だ! なにが『おあずけ』だ! 知ったようなことを! 童貞のくせに! 人間のくせに! ガキのくせに! ワカメのくせにーー!!!」

ひとしきり叫んだあと、はぁ、と息を吐いて、唇をぐっと噛み締めた。

――なのに。
相手は童貞で、人間で、ガキで、ワカメなのに。

「くそぅ、何なのよ、これ……」

さっきからxxxは洪水かってぐらいじゅわじゅわ濡れてるし、それはまあたまにあることだけど、よく分からないのは左胸の辺りがずーっとズキズキモヤモヤしてることで。

こんなの、生まれて初めて。
……あいつに出会ってから、生まれて初めてのことばっかりだ。


「明日は絶対、搾り取ってやるんだから……!!」


ぎりりと歯を食いしばって、私は半分欠けた月を見上げて、心に誓う。
苗字名前の超エリート人生に賭けて、アイツを絶対に食ってやる、と。

そしてそれから、私と手嶋純太の――サキュバスなのに特に刺激的でもR18でも無い、そんな奇妙な関係が幕を開けるのだった。






〜登場人物紹介〜


・苗字名前

母親と父親がそれぞれ高名なサキュバス&インキュバスの、サラブレッドなエリートサキュバス。誘って乗ってこなかった男はいなかった。手嶋純太が現れるまでは。
サキュバスは生まれて3日程度で今の姿まで成長するので、「長いサキュバス人生で〜」と言ってるけど実は対して手嶋と年は変わらない。
最近のマイブームはブックオフで本や漫画を立ち読みすること。今は横山版三国志に熱中している。


・手嶋純太

最初の1日目はマジで疲れてて断ったが、2日目、はっきり意識がある状態で彼女を改めて見た時、その容姿がどタイプで一目惚れしてしまった男子高校生。「多分一回ヤッたらもう来てくれなくなる」と賢くも悟った彼は、あえて徹底的に誘いに乗らないという策略に出て、見事的中。エリートサキュバスを手のひらの上で転がす様はとても童貞に見えない。
毎晩寝る前に抜いてるのでなんとか勃起は防いでいるが、実は毎晩結構ヤバイ。
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