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轟君と事故とはいえキスをしてしまってから一週間がたった。
『…はぁ』
このままではいけないと分かってるのに一歩が踏み出せない。
それに、迷惑をかけている上に轟君の事が好きだと自覚しているからなおの事顔を合わせずらい。
まだ暑い風が頬を掠める。
屋上の僅かな日陰に逃れながら体育座りで顔を埋めていると足音が聞こえた。
「名前、ちょっといいか?」
『…っ』
ゆっくり顔を上げて今、会いたくない人の姿を確認した。
「この間は悪かった。その…俺とじゃ嫌だったろ?」
『…そんな事ない!!』
嫌われたかと思っていたから、近付かないでくれと言われるのかと思ったから会いたくなかった。
轟君から出た言葉は謝罪で、そしてあのキスが彼を傷付けているんだと思った瞬間声を荒げてしまった。
『私は事故でも…好きな轟君とキス出来たのは一瞬でも嬉しかったの。嫌われたくなかった。だから顔を合わせずらくて…ごめんなさい』
「…嫌われた訳じゃなかったんだな。安心した…俺も名前の事…好きだ」
顔を赤くしながら私を見る轟君を見れば胸の奥がドクドクと暴れ始める。
『本当?好き?』
「あぁ」
それ以上声が出なくて泣いてしまう私を轟君は優しく抱き締めてくれた。
『…なんていうか、ごめん』
「謝ってばかりだな」
『お互いにね』
私と轟君は暑さなんてそっちのけで抱き締めあってから唇を重ねた。
2018.2.15.
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