9:うわのそら
駅から歩いていると緑谷君が前を歩いていたから声をかけた。
『おはよう、緑谷君』
「あっ…おはよう苗字さん」
『…名前って呼んで?私もデク君って呼ばせて貰うからさ』
「えっ…照れちゃうな…名前さん…」
『デク君、昨日は爆豪君に凄いボコボコにされてたね…腕は昨日の今日じゃ治らないか…』
「またリカバリーガールに診て貰うから大丈夫だよ」
『そっか』
少し痛々しい感じの腕が早く治るように緑谷の腕に触れる。
『少しだけ治すよ』
「え?」
小さな光の粒子が緑谷の腕を包み込んで淡く消えていく。
『少しだけ痛みは残るだろうけど』
「名前さんって治癒系の個性も持ってるんだね、凄いな」
『あまりにも体力使うからいつもは使わないの。でもデク君痛そうだったからね』
「ありがとう」
ニコニコと笑う緑谷を見て名前も微笑むが緑谷は視線をずらす。
(…可愛い!!)
『?』
門の前にマスコミが彷徨いていたけど無視して通り抜ける。
教室に入ると早めに来ていた女子達に囲まれる。
「名前さん轟君とどんな関係!?」
「付き合ってるの!?」
『えっと、あの…轟君に聞いて…』
昨日の戦闘訓練で焦凍さんに横抱きにされて戻って来た事が気になって興奮ぎみの女子達はサッと簡単に自己紹介してくれた。
『名前って呼んでね、これからよろしく』
「よろしく〜」
相澤先生が来てホームルームが始まった。
まだソワソワした視線を感じながら相澤先生の話に集中する事にした。
「学級委員長を決めてもらう」
「学校っぽいの来たー!!」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」「ボクの為にあるヤツ☆」
「リーダー!!やるやるー!!」
皆が手を上げる中で名前はボーッとしながら成り行きを見ていた。
2018.3.2.
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