6:登校初日
雄英高校の制服に身を包み鏡の前で全身を見渡してから玄関に向かう。
『よし、OK♪…いってきます』
両親は仕事が忙しくてなかなか家に居ない為半年前から名前はほぼ一人暮らし状態になっていた。
通学電車に乗り込むと人が多かった。
もう一本早めにすべきだったと後悔しているとお尻に違和感を感じた。
『!!』
痴漢だ。
登校初日から痴漢に合うなんてついてない。
気持ち悪くて犯人を特定したいのに集中出来ないし混んでいて身動き出来ない。
『…うぅ』
「名前、どうした?…気持ち悪いのか?」
『しょ、焦凍さん!?』
同じ電車に乗り合わせた余り会いたくなかった婚約者…焦凍に声をかけられてしまった。
轟家に足を運べば開口一番に帰れと言われ、学校では近寄りがたい恐ろしい雰囲気を纏っていた彼にいつしか名前は苦手意識を持っていた。
何より憎しみに囚われたような焦凍の目を見るのが怖かったのだ。
『…お尻…触られたんです』
「!!…どいつだ?」
『右斜めだと思います』「じっとしてろよ」
焦凍は名前の背後の相手に気取られないように確認して手を掴む。
「次の駅で降りろ」
「ひっ!!」
次の駅が丁度降りる駅で助かった。
痴漢は駅員さんに引き渡して警察署に連行されて行った。
『焦凍さん、あの…ありがとうございました』
「あぁ、次は気をつけろよ」
『はい』
纏う雰囲気が変わった訳では無いけど私を助けてくれた焦凍さんに感謝した。
教室に入るとちらほらと人が座っていたり話をしていた。
自分の座席に行くと前の席が焦凍さんだった。
つくづく縁があるなと思っていると寝袋に入った相澤消太と名乗る1-Aの担任が現れて寝袋の中から体操服を出した。
2018.3.1.
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