21
真っ暗な空間に一人きり。
周りには誰も居ない。
『誰か、居ないの?』
あぁ、そうか。
目を凝らして見ればここは本丸の私の部屋だ。
足音がするといきなり襖を開けられる。
誰だか分からない恐怖に体が震える。
ギラギラと光る目が私を捕らえてその手に握られた刀が振り下ろされた。
『〜っ!!!』
勢いよく起き上がると見慣れた自分の部屋だった。
「大将起きてるか?」
『うん。』
襖を開けて薬研が入る。今日の近侍は薬研らしい。
『おはよう薬研』
「あぁ、おはよう。大将…何かあったのか?」
『悪い夢を見ただけだよ。たまに見るんだよね、昔から』
そう言って笑う少し汗で湿った名前の顔を見た薬研はそっと手を両手で握る。
『薬研?』
「今夜俺っちと一緒に寝ないか?」
『…はぃ?えーと…添い寝?』
「そうだ。大将は違う意味で捉えたのか?」
『…そんな事ないよ』
ニヤニヤとこっちを見てくる薬研は意地悪だと思う。
だけど可愛い。
名前は着替えると言って薬研を部屋から摘まみ出し、赤くなった顔を手で扇いだ。
2018.2.1.
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