short story | ナノ

 赤い悪戯(音也)

「何でなまめかしいんだろ」


オフの日の昼下がり。
せっかくの休みだけど外はあいにく雨。
特にすることもなく、部屋のソファーでのんびりしていたとき、俺の隣に座る名前が突然そんなことを呟いた。


「何が?」

「蚊に刺され。ほら、よく"蚊に刺されたところがなまめかしい"とか言うじゃん?あれ何でだろうなぁって思ってさ」


よく言うかなぁ、と思ったけど、それは言わないでおいた。
……それより名前はその言葉をどこで聞いたんだろう。


「私って蚊に刺されるとすぐぷくーって膨れちゃうからさ、どんな感じなのかさっぱりわからん……」


他の人なら真面目に考えないようなことを真剣に考えたりするあたり、名前は変わった子だと思う。

うんうん唸りながら考えてる姿が可愛くて、ついイタズラしたくなった。


「ねぇ名前」

「何?」

「多分、こういうことだと思うよ?」


と言って名前を引き寄せ、その白い首筋をちゅっと吸い、赤い印をひとつつける。


「痛っ……っあ」

「うわっ、可愛い声……そんな声出せるんだ?」

「なっ……!!」


いろいろな恥ずかしさが相まったせいか、名前の顔は真っ赤だ。


「う〜ん、やっぱり名前はなまめかしいっていうより可愛いと思うなぁ」

「……っ、この変態……!!」


少し涙目になりながら睨んでくるけど、それすら可愛いと思ってしまう俺は重症だろうか。


「え?なんで?名前が考えててもわからないみたいだったから教えてあげただけだよ?」

「だからってこんな……はぁ、みんなに会ったらなんて言い訳すればいいんだろ……」


うん、見えやすいところにつけといて正解だったな。
名前の周りは油断ならない人ばかりだからね。


「蚊に刺されたって言えばいいんじゃない?」

「……っ!音也のバカ!!」






赤い悪戯


(俺のもの、って印)






2013.01.03





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