大悟



(板垣大悟)




2年生に上がって、後輩が入ってきて。


「大悟先輩、雰囲気かなりやわらかくなりましたね」
と、中学からの後輩である岩岡千尋に言われた。


まあ、確かに自覚はある。
中学時代の自分、かなり面倒臭い奴だったから。









話は中学2年生の頃だ。

1つ上の先輩が引退して、いよいよ自分たちが部活を引っ張る時期になって。部長も任されて、不安だったけど自分なりに頑張ろうと思った。

でも、上手くいかなかった。



北斗中のソフトテニス部で、俺たちの代で1番テニス歴長いのは自分だ。少年団にも男子の同期はいたけど、何人か中学で他の部活に競技転換したから、少年団上がりは俺を含めて2人だけだ。逆に、中学でテニスを始める人が大半だった。

まあ、同期とも最初は仲良かったんだけど、次第に言い合いすることが多くなって。多分、同期の男子はみんな俺の事嫌いだったと思うし、明らかに俺が部長になる前となってからの部活への態度も違かった。今思えば、多分俺が部長になったのが気に食わなかったんだろう。

それもそう、元々部長候補の奴はいた。俺よりも協調性あるし、リーダーシップのある奴が。
それが、唯一少年団上がりの仲間だった同期のことだった。

ただ、こいつは2年生の6月…そう、先輩の引退前の大会で靭帯損傷の大怪我を担い、手術するまでになった。競技復帰も勿論すぐは厳しく、休部状態だった。

だから、余計にだろうな。




そんなこんなで、先輩が引退してから初めての団体戦。その大会は学年対抗の団体戦だったので、2年生チームで出場したが、南が丘中にぼろ負け。
だけだったらまだしも、俺は大会翌日にブチ切れた。

「やる気ないなら大会出んなよ」
と俺は言い放った。

そりゃそう、大会なのにやる気が無いのがモロ出しだったからだ。そんな態度が許せなかった。




自分の1つ下の代が、千尋と陽向のような全国経験者もいたり、他のメンバーも含めて強い世代だったので、以降の団体戦のメンバーはほとんど下級生。それに余計に気に食わなかった同期たちは部活に来なくなった。そして俺がそいつらに向かって部活来いと催促したら、喧嘩になって。しかも教室の前とかで。


「ねえ、何で部活来ないの」
と俺は聞くと、

「俺にはもうやる気ないから、やる気のある奴らで部活やってれば良いじゃん。もう大悟と部活やるくらいなら辞めた方がマシ」
と答える同期のヤツ。

「は?」
と思わず殴り掛かる勢いで食らいついた。流石に殴らなかったけど。



「ねえ大悟、その辺にしなよ」
と女子ソフトテニス部の人達が静止に入ってきたけどそれも、

「うるせーよ、お前らは喋んな」
と言って振り払っていた。


実際にその後、男子ソフトテニス部の同期の大半が一斉に退部した。原因は大悟だ、と言ってたようで、顧問の先生からもこっ酷く怒られたけど、自分に非があるとは当時は思ってなかった。




それだけじゃない。
冬の体育館練習の時、入れ替わりだった女子ソフトテニス部の人たちが部活終わりに体育館前で楽しげだった時。正直入口前で邪魔くさかったし、目障りだった。

「女子部活終わったんなら早く帰れよ、邪魔」
と俺はそそのかすように言った。


すると、女子たちは反抗してきた。
「確かに私たちが悪かったけどその言い方はないでしょ?」
と。

「は?言われるようなことやってるお前らが悪いんだろ、てか普通にその場所に固まられてさ、邪魔になるの分かんないの?」

俺はそう言い残したが、女子たちはかなり怒っていたし、次第に女子からも話しかけられなくなったと思う。






まあ、そんなこんなで好き放題言って、友達無くして、正直楽しかったとは全然言えなかった中学時代。

でも今更テニスやめる訳にもいかなかったし、テニスを通じて出会った先輩や後輩達は大好きだったし、ペア組んでくれた後輩の陽向と出る大会も楽しかったし。県大会でベスト8入った時とかは特に。

逆に、こんな横暴なやり方だったのに着いてきてくれた後輩達、今思えばすげーなって。
元々、後輩達は、競技に対して意識高い人が多い世代だったってのもあると思うけどさ。





「そういえば、よく俺の事嫌いにならなかったよね」

と俺は、千尋と陽向に聞いたことがある。
これは、俺が中3の、引退の時の話。

少年団からの仲である陽向は
「いや、今更嫌いにならないです」
なんて言ってたけど。

そして、千尋も。
千尋は少年団は違うし、何なら中学入学と同時にさくら市に引っ越してきたようなやつだから、こいつは正真正銘中学からの後輩。

「まあ、確かに大悟先輩ってストレートに物言いしますけど。でも、先輩は間違ったことなんて言ってないし、何よりも上手いから技術面でも頼れる存在だし、俺たち後輩のことも精一杯応援してくれてるし、困った時はサポートしてくれたし。だから、何があっても俺は先輩に着いてくと思いますよ。辞めた人達は、先輩のそういうとこ見抜けなかったと思ってます」

千尋がそう言ってくれたから、部長としての役割はしっかり果たせたとは、思う。

「ありがとうね。これから皆が主体になって部活やってくと思うけど、俺みたいにはならないでね」
と俺は言葉を残して、中学の部活を引退した。










そして今、高校2年生。

正直、中学があんなんだったから、高校で部活を続けるか迷った。でも、西星の部活体験行った時に、ここなら自分に合った環境なんじゃないかと思ったから進学を決めた。

入学前は凄い不安だったけど、高校では同期とは仲良くやっていけてる。というのも、俺より上手い奴らばかりだから。同期の中には、全中も出場した南が丘中のメンバーだった人が4人もいるし。


そんな様子を見た、この春西星高校に入学した北斗中の後輩たちが、まずびっくりしたのがこのことのようだった。

春休み、部活に参加していた後輩たちに
「大悟先輩が同級生と仲良さげにしてる…」
なんて言われたもんだからな。

それを隣で聞いていた玲衣たちは
「お前、後輩に珍しがられてるほど同級生と仲悪かったんだ」
なんてバカにしてきたけど。



まあ、良い仲間に恵まれたと思ってるよ、俺は。




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