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「―………結局その研究施設はどっかのマフィアに潰されて今は無いんだけど、その奇襲に乗じて逃げ出したんだ……こんなんだから気味悪がられて相手してくれるヤツもいなくてさ、でもどうしても叶えたい願いがあったから……一応中には俺なんかに恵んでくれる人もいて、何とか生き長らえてデイバンまでたどり着いたんだ」

「で、GDの飼い猫にされた…と」

「日課になってた、懐いてくれた動物が見捨てられなくてさ、エサやってたらいきなり担がれて"お前は俺が今日から飼ってやるよ"とか"キティ"なんて呼ぶし………って話が逸れちゃった」

ハッとしたアオイの表情が可笑しくて笑ってやると、安心したかのように気の抜けた笑顔で頭を撫でられる。
アオイは大きく息を吸うと、撫でていた手を離して自分の首にぶら下がっている革紐を外して引き上げた。

「それ、確かアオイが大事にしてる"お守り"ってヤツだろ?」

「そう…よく覚えてたね!それじゃコレは、覚えてる?」

「………ぁ」

革紐の中央にぶら下がってる袋のような物を開いて中身を取り出したアオイは、懐かしむようにそれを大事そうに手にして俺へと差し出してくる。受け取ったそれは小さく折り畳まれた紙で、開けてみてと促されるまま開くと、俺は小さく声をあげた。

忘れもしない、これは孤児院で俺がアオイにやったモノだ―……

開いた古い紙にはヘタクソで幼稚な落書きと文字が記されている。
幼い俺がアオイと一緒になって描いた、俺とアオイが仲良く手を繋いでる絵に"ずっといっしょ"と幼い字体で綴られた言葉。

忘れてなかったんだ、アオイは!!

感極まって今にも泣いてしまいそうな俺に、アオイはとどめとばかりにあらたなアイテムを差し出してきた。

「ジャンがくれたクローバー、俺の幸運のお守りだよ……俺が生き残れたのはきっとジャンのおかげ、俺…ずっとジャンに、会いたかったから」

それは二人で孤児院を抜け出した時、偶然みつけたクローバーの群生に二人で四つ葉を探し、見つけた俺がアオイにやったもの。

微笑んだアオイに堪えきれなかった俺はついに泣き出し、アオイに抱き付いた。
受け止めてくれたアオイが優しく俺の背を撫でてくれる。
温かくて、安心するアオイの温もりに涙は止まることなく、溢れ続けた。

「"どうなってもいい"って、叶ったらもう死んでもいいって…っ?」

「はは、やっぱり誤解した……」

俺を抱え直して膝の間にいれると、ギュッと背に回されていたアオイの腕の力が増して、耳元でクスリと笑われる。

「それは"GDの飼い猫"ってバレて、袋叩きにされても文句ないな〜って」

「ハァ!?」

「だって、一緒に脱獄だよ?GDの回し者って疑われても仕方ないし、命令は絶対とからしいから死なない程度にはやられるかな、って」

苦笑するアオイに脱力して盛大にため息を吐く。

「もし、ボスがCR:5に引き入れる気なら、俺の部下にして一生こき使ってやる」

「それって…ずっと一緒にいて欲しいってこと?」

嬉しそうに笑うアオイがあまりにも格好良くて、赤い顔を見られたくなかった俺は照れ隠しに突き飛ばそうとして一緒に倒れ込んでしまった。
抱き締められてるって事をすっかり忘れてた…ってか、俺すっげー恥ずかしいことされてたんじゃ!?

「ふふっ、」

「笑うなアオイ!!」

「だってジャン…っ、顔、真っ赤…ハハっ!……っ、はぁ―…俺はジャンカルロのそばにいるよ、この命ある限り…ジャンを守る、誓うよ」

ひとしきり笑ったアオイは穏やかな笑みのままそう言うと、俺の手を取って口元へと運ぶ。
あまりにも神聖なものに感じて動けずに、ただただ成り行きを見ていた俺の耳にチュッとリップ音が届く。
手の甲からアオイの唇が離れ、自由になった己の手を……俺はしばらく見つめていた―………





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