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点呼のために一度房に戻った俺たちを待ち受けていたのは、ロイドからのセクハラだった―……

「助かったぜアオイ」

「ちょっと疲れたけどね…」

初めて一緒に昼食を採って、昼寝場所にしている木陰へと向かう中、改めてアオイに礼を言うとクタクタだと言いたげにため息を吐かれた。
そりゃそうだ、"リネン室で抱き合ってたんだって!?"から始まり、誤解だと言ってるのに耳を貸さないロイドはアオイに"オトモダチ"にならないかと誘ってきたのだ。
"ずっと気になってたんだよね"だの"いい形してる"だの言って頬を染める変態相手に苦笑いのアオイはドッと疲れていた。

「けどアオイも嘘、吐くんだな…転んだ俺を受け止めただなんて」

「"嘘も方便"、って言うだろ?……ん〜、さて…俺の何を知りたいんだっけ?」

目的地に着いたアオイはグンッと背伸びをしてから腰を下ろすと、俺を見上げて笑いかけてきた。
俺はアオイの隣に腰を落ち着かせると、立てた膝の上に腕を組んで、そこに顎を乗せてアオイに視線を向ける。

「そうだな…何で死刑?初犯で死刑なんて、そうとうだぜ?」

「"殺人罪"らしいよ…犯人は俺じゃないけどね、たぶんハメられたんだ」

アオイは今日の夕飯は何かな?と訊ねるみたいに淡々と話す。

「…あの日も俺は部屋にいて、部屋の主が帰って来ないのを良い事に抜け出したんだ……いつもなら誰もいないし、いたって簡単に逃げられるんだけど…何故かその日はそうもいかなくて、GDの下っ端に囲まれた挙げ句後頭部に一撃食らって意識無くしちゃってさ」

スッと空へ視線を向けたアオイは流れる雲を見ていて、俺はただ黙って話続けるアオイの横顔を見つめていた。

「意識戻したら咽せかえる血の臭いと悲惨な光景…周りは血の海で、吐き気がしたよ……結局すぐに駆け付けた警官に逮捕、まぁ現行犯逮捕なわけだからね…どんなに言っても信じてもらえない」

苦笑したアオイの表情が痛々しい。
その場の光景でも思い出したのか、心なしか少し指が震えていた。
それが見ていられなくて、そっと手を伸ばしてそれに重ねると握り締めた。

「……確かに、ハメられたんだなソレ…、あのさ、あの時言ってた"望みは叶った、どうなってもいい"ってどういう事?」

「あぁ、それね……なら俺が里親に引き取られてからの話からしようか」

そう言ったアオイはゆっくりと、俺と離れていた期間の事を話してくれた。



マンマがアオイに親が出来たと喜んで、俺が泣いた…ずっと一緒にいようって約束したのにって、俺は裏切られた思いでいたあの時―……

「俺を引き取った男はどっかの研究員でね、俺みたいに身寄りのない子供を引き取っては研究の実験体にしてたんだ…つまり"モルモット"だね、たくさんの子供達がその実験の犠牲になった……」

「何の、実験…?」

「色々部署があったから、多くは把握してないけど……治療薬、新薬の試験…けど俺がいたトコは"人体兵器"、つまり戦争が起きた時に役立てようってヤツだね……俺はそこの生き残り、おかげで目も髪も変色してこの有り様さ」

ボスが脱獄させたがってるのはそのせいではないかと続けたアオイに、俺は何も応えられないでいた。
あまりに漠然とした話に言葉が見つからなかったとも言えるが、どう彼に声を掛ければいいのか分からなかった。

「この容姿と引き換えに手に入れたのは、少し人より見通しの良い視力と、身体能力がちょっと上がったくらい…弾丸を避けられる程に成長したのは有り難いかな?」

「は!?」

「弾道が分かるんだ、あと走ってもあんまり息が乱れない」

「…すげーじゃん、それ!…って、それのどこが俺の質問の答え?」

あまりの驚きに身を乗り出して詰め寄った俺に、アオイは笑ってまだ続きがあるんだと言った。




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