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あれからシーツをリネン室に運ぶ道すがら、今度出所するという囚人に掴まり、握手を求められた代わりにタバコを一箱献上された。
他にも握手を求めてくる囚人がいて、相手をしていればだいぶ遅くなっていた。






―…………
………


「ってアオイ!?こんなトコで何してんだよ!?」

着いたリネン室で俺が目にしたのは、地べたに這いつくばって苦笑するアオイの姿だった。

「はは、は……ごめん、ジャン…ちょっと手を貸してくれると、嬉しいんだけど…」

シーツを投げ捨てて駆け寄れば、アオイの腕が壁へとめり込んでいて、状況の把握出来ない俺はどうすればいいのか分からず慌てる。

「…ちょっと、待ってね……っと、抜けた…」

「アオイ…?」

「ココに"良いモノ"が入ってるって教えてもらったんだけどね、腕がそれ以上奥に入んなくて…」

"良いモノ"と立てた指を曲げて何かを示した"ソレ"を理解して、アオイに見張りを頼んだ俺は袖を捲ってそこへと腕を突っ込んだ。

「なぁ、」

「ん?」

「今まで、何してたんだ?ずっと探してたんだぜ?」

「Difatti、俺の刑が早まったって言われてさ…ならば出来る事を早く動いてこなそうかなーって」

そしたら夜以外交渉やら情報集めで会いに行けなかったんだ、と言われて動きを止めた俺はアオイへと視線を向ける。
俺の視線に気づいたアオイが苦笑して見せ、また扉の方へと向き直った。

「刑が、早まったって…どういう」

触れた金属を掴んで引き抜くと、結構な上物のピッキングツールが顔を出す。
それを眺めながら聞き返した俺に、アオイは深く息を吐いてから口を開いた。

「死刑執行日、来週になっちゃった…どうやら俺が居ると困るみたいだねぇ」

「なっ…」

「さっきベルナルドに会って、ジュリオの懲罰房入りは免れたけど…来週あたり移管されるかも、ってさ」

「―カッツォ!アオイだけじゃなくてジュリオまで……せめて再来週なら…」

ポンと頭にアオイの手がのって、数回軽く叩かれる。
優しい、俺の大好きな笑顔。
その笑顔を向けてくるアオイに、悲しくなって顔を歪ませれば、困ったような表情でシーツを差し出された。

「点呼もあるし、コレ…たたもうか?」

「…そう、だな……って、アオイ……死刑…って…」

「言ってなかったっけ?それよりジャン、GDの奴と何かあった?」

シーツを二人でたたみながら訊ねれば、逆に聞き返されてしまった。

「いんや?なんで?」

「ジュリオがさ、昨日GDの奴がお前を馬鹿にしたとかでやったらしいんだ」

マジかよ…
たかだかぶつかられただけよ?
………メンチ付きだったけど。

呆れる俺に笑ったアオイがシーツを棚へと直していく。
その様子を見ていた俺は、アオイが直し終えたのを見計らって、振り向いた瞬間抱き付いた。

「…っ、と……どうしたの?」

「点呼、終わったらさ…」

「うん」

「昼飯…一緒な……それからお前の事、知りたい」

そう言った俺にアオイは鼻先を髪に擦り付けながら、小さな声で呟くように言った。

「いいよ…ジャンの知りたい事、全部教えてあげる」

と―…………


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