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情報屋、クレイジー・ハーミットに聞けば死人が今週で3人出たらしい。
それからルキーノが俺を嗅ぎ回ってる事も……用心深く合理的、幹部の手本を見せられたようだ。
やぁ!ラッキードッグこと、ジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテ!
泣く子ももっと泣く、マフィア"CR:5"の幹部だぜ!
「お前、寝癖直せよ…見苦しい」
「フハハ…確かに酷いな」
「笑うな、ベルナルドぉ」
ムスッとしながら言えばまた笑われた。
ズボラは女にモテない、だの…風呂嫌いは筋金入り、だの…こっちは脱獄ルートの事とかあって寝不足だっつーのに、風呂とか思い出させんなよな、カッツォ。
トレイを持ってベルナルドの後を着いていけば、手招きされた。
そこにはもう他のヤツが座ってるのに……何か用でもあるのかしら?
そんな事を考えながら近寄ると、そこに腰掛けていた奴らが一斉に立ち上がり、四方を囲う。
「ほう…こうすりゃココでも秘密の会話ができるな」
「所内の構成員にもお前が幹部に昇格した事は通達した……好きに動かしてくれ」
「急に幹部とか予想外ですってば…ねぇ?まっ、ヨロシク」
「俺も…もっと先かと思ってたよ」空いた席へと二人で腰掛け、他愛なく話を続ける。
なんかちょっとVIP気分だ…
ってか、ベルナルドのヤツ"もっと先"って……いつかなるとは思ってたのな。
「相変わらず、無茶命令するよなぁーボス」
「思い出すのは色々…だな………けどね、ボスは本当に無理な命令は出さないんだ」
頬杖をついてベルナルドに体を向けるとがぽっと口にガムを袋ごと突っ込まれた。
差し入れだと言うベルナルドに、ありがたく受け取ることにする。
「Infatti、お前をボスにってのは驚いたけどね………でもちょっとないチャンスだろ?逃すのはもったいないぞ、"LUCKY DOG"」
「おうよ、チャンス以前に命令だしな」
イタリア語に切り替えたベルナルドに倣って、俺もそれで返す。
すると意外にもベルナルドが困ったように笑って切り出してきた。
「ところで…今朝もアオイは見かけなかったが、ジャンは会ったのか?」
「それがさ、昨日から会うどころか見かけてすらいねぇんだよなぁ…」
「やはり何かあるのかい?……俺も気になって色々と探りを入れてるんだが、アオイに関しての情報が全くとしてない…お前から本人に訊いてみてくれ、お前になら話すだろう」
俺もそうしたいが、そもそも当の本人が見当たらないんじゃどうにもならない。
一応は頷いてはおいたが―………
「そういえば、ベルナルドは経済事犯で捕まったんだっけ?」
「あぁ、………あの判決スピードにはひっかかったな……残ってる係争案件も山積みでな、弁護士をフルに走らせてる」
聞いてるだけで頭痛がしてきそうな話に苦笑する。
ホント、コイツには頭が上がらないぜ…
「ベルナルドっていっつも忙しいよなー……組織の事に自分の事…」
「お前の事も、な……ジャンの頑張りが頼みの綱だぜ?」
そう言ったベルナルドは自分の器に入ったドロドロの食いモンを俺の容器へベシャッと入れると笑った。
「…食べなきゃ死んじゃうわよ?ダーリン」
「心配してくれるのかい、ハニー?それだけで満腹さ…何でも甘えてくれ」
「満腹なのに?」
「別腹だよ」
ならば甘えさせて貰おうと、俺はベルナルドの耳元へと口を近付けて何言かを告げると了解してくれた。
よし、上手くいけばカードが揃うぜ
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