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部下を従えさせてやってきたイヴァンに手招きをして房へと呼び込む。
「お前、他の幹部とは仲良いのか?もしかして…下っ端幹部として孤立してんじゃねーの?」
「あんなぁ、今一番下っ端なのはテメーだろ!?」
「まま、下から数えた方が早いモン同士、仲良くしようや…一本ドーゾ」
「火」
あまり大声を出されるのは面倒だとタバコを取り出してイヴァンへと渡す。
ホント、いつもいつも眉間に皺寄せて苛立って…疲れないのかしらねぇ…
「ところで、イヴァンの逮捕だけど……何したんだ?相手の口、塞いじまえば済む話だろ」
「空気読めねぇカタギと口論して……ちょっとボコっちまったんだよ……脅しにも桁違いの賠償金にも応じねぇ奴でな、示談に持ち込めず―……だ」
「ばっかでー」
「うるせぇ、ありゃ仕込みに決まってる……手を出させられたんだ」
コイツも、か。
あんまり考えたくはねぇが、他の奴の話を聞いてからのがいいよな。
「なぁ、イヴァンはアオイの事どう思うよ?」
「あぁ?何でアイツ―……ってかお前の知り合いだろーが」
腕を組んだイヴァンに見下ろされ苦笑してみせると呆れたように溜め息を吐かれた。
「ボスの命令だからな、納得はしてやる……少しでも怪しいと思えば消せばいいだけの話だ」
「……―ッ」
イヴァンの言ってる事も分かる、何故ボスがアオイを知っていて必要としているのか…謎だらけでワケが分からなくなる。
そんな物思いに耽っているとイライラした様子のイヴァンが話を切り出してきた。
「―……んな事より……何でお前が次のボスって話になってんだ!!」
「Taci!もっと小さい声で!」
声を荒げたイヴァンに慌てて小声で諭せば、煙を大きく吸い込んでゆっくりと吐き出した。
微妙に下手なイタリア語で聞かれたのは"どうやってボスに取り入った?"かだ。
知ったこっちゃねぇってんだ、つか俺の方が理由聞きてぇくらいだ。
「まさか……ボスの隠し子じゃないだろうな…」
「俺確実に両親いたっての!」
また突飛な事をこの男は。
突然胸倉を掴まれたかと思えば一気に詰め寄られて、一瞬怯む。
「なら何なんだよ!!」
「だーかーらー、知るかぁ!ボスに訊けって」
「ココ出ねぇと訊けねぇだろ!!……俺はお前なんか絶対認めない……ボスになるのは俺だ」
「ふーん……少なくとも、ベルナルドとルキーノ、ジュリオを押しのける自信はある訳だ」
そう言った瞬間だった。
胸倉を掴まれたまま床に押し倒され、上にのし掛かられる。
咽せる俺を見下ろしたイヴァンは目を細めてニタリと笑んだ。
「ゴホッ、いってぇ…何すんだよイヴァン…」
「イヴァン様と呼べ…"イヴァン様"だ、立場を自覚しろ」
「……イヴァン様」
「そうだ、それでいい」
嫌々ではあるが呼べば、イヴァンは俺の顔を掴むと品定めでもするように見つめてきた。
「お前……割と女にモテそうなツラしてやがんな、ムカつく……ははん、さてはこの顔でボスに媚びやがったな!?女みたいによ!!」
「――はっ、男の嫉妬は見苦しいぜ…イヴァン様?」
「…っこの……!」
あまりにもな物言いに少々、温厚な俺様も頭にくるってもんだ。
ちょっとからかい混じりにそう言ってやれば、ムキになったイヴァンが拳を握ったのを視界に捉え、殴られるのを覚悟してグッと奥歯に力を入れた。
けれど待ってた痛みは来ず、うっすら瞼を開ければイヴァンが立ち上がるところだった。
「どうした?イヴァン様」
上半身を起こして訊ねれば、入り口に見知った看守の姿を捉えた俺は慌ててたちあがり、どうにかジョシュアに帰ってもらって未だ俺の房の中にいるイヴァンへと声をかけた。
「――…さて、何の話だったっけ…イヴァン様」
「それ、もういい」
「何がもういいんだよ、イヴァン様」
「その言い方、馬鹿にしたみたいに聞こえるんだよ!元に戻せ!!」
怒鳴るイヴァンに了承して、ワザとらしく"頼みたい事があったのに"と言って大袈裟にけしかければ、怒鳴りながらもノッてきやがった。
意外にも扱いやすくて助かる。
さて…と、情報屋んトコにでも行ってみるとしますかね……
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