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「…どーも、わざわざ来てもらって……面倒だけど話に付き合ってくれよ…少しは意思疎通図っとかねぇと、肝心な時ヤバイだろ?」
まず始めにお呼びたてしたのはルキーノ。
房に入ってきたかと思えばタバコに火を点けて、美味い葉巻が吸いてぇとか言って人を小馬鹿にしたような態度をとりやがった。
「要は、俺に協力して欲しいんだろ?…当然、してやるさ……安全性は高い方がいい」
ニヤリと笑って壁から背を離すと、俺の座るベッドへと腰掛けてきて話を再開させる。
「俺が望むのは、早くココを出てデイバンの支配地盤を復活させることだ……あの街はCR:5無しじゃダメになる」
「あぁ」
ただの傲慢なだけの男じゃない、人の上に立つのに向いたタイプの人間ってやつかもしれない。
ガムを噛みながら、俺はココにぶち込まれた経緯を聞いた。
「ルキーノは捕まった時、何してたんだ?」
「通常通りシノギに精を出してただけだ……サツにゃいつも鼻薬がバッチリ効いてたんだが………あの日はまるで様子が違ってたな」
ヤバイネタを握ってても己の身は守れなかった―――と、ルキーノ曰わく検事局か市長、もしかしたら州知事の入れ知恵だろうとのことだ。
ガムを膨らませては思考を巡らせる。
「所詮は賭けだな」
「俺はココの脱獄経験者だ。だからボスは俺に話を振ったんだろ、エサくっつけて……ただのヒラがいきなりボスだぜ?おかしな話さ」
「そうでもない…あの人の判断はいつでも妥当だ……それに俺は別に自分がボスになりたいって訳じゃないしな」
「へ―ぇ…」
「そんな事より、」
ルキーノは膝に肘をついて指を組み、そこに顎を乗せるとこちらに顔を向けてきた。
その表情があまりに真剣なもので俺は息を呑んだ。
「…あのアオイって男、本当に信用できるのか?」
「アオイは……」
「あまりにも素性が知れねぇ…それにGDの飼い猫ってのがな」
眉間に皺を寄せたルキーノの様子に、俺も頭をかかえる。
信用は…してる。
アオイは俺を裏切らない、それは絶対だ。
けれど脱獄の話が出て、すぐに俺を避けてる理由が分からない。
「……ルキーノは、アイツの事どう見る?」
「俺か?そうだな…アオイ本人自体は悪くねぇ、飼い猫だって聞いてなけりゃ気にもならなかったさ」
残念そうに息を吐いたルキーノはクイッと顎をしゃくり上げて合図を出す。
出てけ、ね…
「じゃ、ヨロシク……って!ココ俺の房―……!!」
立ち上がり歩き出して気付いた俺は、踵を返してルキーノに詰め寄った所で顔面を鷲掴まれて止められた。
「お前は外に出たらまず風呂に入れ。それ以上臭うのはそろそろ許せん領域だ」
すれ違ったルキーノに目を細めて、腕の袖に鼻を近付けてスンッと吸ってみる。
まだまだ平気だと思うんだけどなぁ……
男が細かいこと気にすんなっつーの
「フン」
「!」
……アオイは、俺の匂い好きだって…言ってくれるモン…
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