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「アオイが何者かって…そんなの、俺とおんなじ孤児院出身でただの―……」

「"ただの"、一般人だってか?もしそうなら、なんでコイツはココにいて、親父が脱獄させようとしてんだ?なぁ…」

ルキーノの威圧的な目に口を噤む。
確かにそうだ、なんでボスはアオイも一緒にって命令を下したんだ?
俺の知らない、空白の期間にいったい何があったんだよ、アオイ―………

「ジャンさんの手紙の内容と俺たち幹部宛ての手紙の内容が一致…してます……なのでやはり、アオイさんには…何かあると…」

そう解釈した方が理解できる、そうジュリオに言われてしまうと返す言葉が見当たらない。
アオイへと視線を向けると、どうにも困ったように苦笑して頭を掻いていた。

「ん〜…、何者って、言われてもなぁ」

「アオイ……」

「そんな顔、しないでよジャン………っと、そうですね…"GDの飼い猫"…と言えば、お分かりいただけるでしょうか?」

あまりこの呼び名は好きじゃないのですが…とパーカーのポケットに手を突っ込んだアオイはコテンと小首を傾げて、おどけたようにはにかんだ。

"GDの飼い猫"―……?
聞いたこともないが、GDって…どういう……

周りに目を向けると、俺以外の幹部が全員険しい表情をしてアオイを警戒するように見据えている。

「GDの飼い猫、って…お前……ッ!」

「待てイヴァン!…お前が"飼い猫"?」

「ちょ…っと待てよ……何か俺だけ置いてきぼりなんだケドよ…アオイ、どういう事だ?」

周りを一眼して俺は最後にアオイへと視線を向けた。
アオイは一つ息を吐くと俺を落ち着かせるためか、優しい笑みで頭を撫でてくれた。

「俺の望みはもう叶ったしな、どうなっても良かったんだけど……脱獄となると問題だよね?…GDの飼い猫ってのはね、ジャン」

諭すように話出したアオイに周りの連中が一気に脱力したのが見てとれた。

「GDの中にいる…幹部?俺もよくは分からないけどそういう奴がいてね、ソイツが気に入って飼い慣らそうとしてた…ってのが俺の事なんだ」

「「「はぁ!?」」」

「あれ?ジュリオさん以外の皆様、どうしました?」

「俺ゃすっげぇ暴君で、人を人とも思わねぇ奴だって…」

と、イヴァンちゃんが指をワキワキさせながら。

「確かアレだろ!?猫のように現れては不幸を贈るっていう!」

クワッと、ルキーノさんが男前な顔を崩して。

「いやいや!首の鈴の音を聞いた者は皆喪に伏す…猫のように気まぐれで、ソイツの気分で生かされた奴がそう言って……」

少し困惑が窺えるような震えた声で語るベルナルド。

「ハハッ!凄い事になってるなぁ…実際はこんなんで、申し訳ないんだけど」

俺が言ってるのが事実なんだけど、というアオイに脱力。
アオイが言うには、その男に気に入られただけでGDには入っておらず、印も刺れられてないそうだ。

けれど俺が気になったのは"望みは叶ったし、どうなっても良かった"と言ったアオイの言葉だった―………





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