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「―――は?何の用だって?」

「いいからついて来い、大事な話がある」

フェンス越しで力の有り余った囚人共がストリートファイト的なモノをしている。
それを取り囲む観客たちの声を背に受けながら、俺とアオイはベルナルドと向き合うようにして立っていた。

「―……や〜…、俺…食堂でオヤツでも……」

「大事な話なら、俺は席を外そうか?」

「いや、アオイも同席してくれ……幹部命令だ、オメルタのもと俺に従え…ジャンカルロ」

はぐらかそうとした俺に、ベルナルドはスッと表情を変えて告げた。
初めてだ…ベルナルドが俺にオメルタを持ち出すなんて……

「急げ、待たせてある」

踵を返したベルナルドに、俺とアオイは顔を見合わせてからゆっくりと足を進ませた。





「人払いは完璧か?」

初めに聞こえたのはルキーノの声だった。
それに答えるベルナルド、周りにはCR:5幹部の面々……いったい何の集まりだと思っていた俺は自然とアオイへ視線を向けていた。
どうやらアオイも同じ事を思っていたようで、小首を傾げてその輪を見つめている。
俺はともかく、アオイは幹部でも…ましてやCR:5にすら組していない奴だ。
そんな奴がこの面子の輪に入る事があまりにも不釣り合いで、俺は嫌な予感がしてならなかった。

「遅っせぇんだよテメーら!さっさと来やがれってんだ」

「!」

うるさいイヴァンの隣、今朝食堂でアオイが助けた男が立っていた。

「そっちがアオイで、こっちがジャンカルロだジュリオ」

「…どうも、ジュリオ・ディ・ボンドーネです……」

「っとヨロシク、俺の事はジャンとでも」

「はい、ジャンさん」

"生粋の戦闘員"噂だけはよく耳にするが、大人しくてソルダートっぽくない。
っつかなんでそんな丁寧な呼び方なんだ?

「俺はアオイ、よろしく」

「先程は…ありがとう、ございました…アオイさん」

「気にしないでください、別に大したことしてないし」

あわあわとするアオイも可愛いなぁ〜なんて場違いな事を思っていると、壁に凭れていたルキーノがベルナルドへと声を掛けた。

「―ちッ、胸糞悪ぃぜ」

イヴァンの嫌そうな表情を一眼して、ベルナルドに呼び掛けに振り返ると一通の手紙を差し出された。

そこにはトスカニーニの紋章が刻まれた蝋印、つまり―………

「―――ボス…アレッサンドロから……?」

「…開けてみてください、俺たちはもう別の手紙でその内容を知っています」

ジュリオの言葉に頷いて、俺は手紙の封をきって便箋へと目を落とした。

そこには―……有り得ない内容が書いてあった。


"―――以前より、カヴァッリから申請のあった幹部位の移譲を認め、ジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテを新たな幹部位に迎える。―……服役中であるジャンカルロに命令する、同刑務所に収監された他四人、並びにアオイ・九条を連れ、脱獄せよ。その脱獄に成功した暁には私、アレッサンドロ・デル・サルトはジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテに―………頭領の座を譲る意志である"

「――は?」

誰も、笑ってねぇ……

「ジャン?…どうかした…?」

「はは…っ、これ…さ…俺がカヴァッリ爺様の幹部位をもらうとか、6人まとめて脱獄できたらボスの座譲っちゃうぜー?とか……書いてあるっぽいんだけど……」

「…6人、て……っ?」

「そうだ…お前も入ってる、アオイ」

驚き、瞳を揺らすアオイにベルナルドが答える。
それを聞いたアオイは余計に困惑しているらしく、口を戦慄かせていた。

「…それからアオイ、お前に聞きたいことがある」

「……何、ベルナルド」

「―…………お前はいったい何者なんだ……?」

その場にいた全員が、アオイへと視線を向けていた。


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