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さて、少々俺達の昔話でもしようか―………





「今日から、あなた達と一緒に生活してもらうアオイくんよ…仲良くしてあげなさいね?」

「…………ぅわぁ―…っ」

マンマが連れてやって来た少年は、俺よりも小柄で怯えたように視線をさ迷わせてマンマの後ろに隠れていた。
一瞬だけ、はっきりと捉えた黒髪に同色の大きな瞳、その数秒で俺は惹きつけられてしまったのだった。





それからの俺は―……言わずもがな、暇さえあればアオイにちょっかいを出すようになった。


「アオイ!なぁ遊ぼうぜ!」

「……―っ、」

他の奴らがキャッキャと遊ぶ中、独りで小さく丸まって座り込んでいる姿を見つけて声をかければ、身体をビクンと跳ねさせて駆け出してしまう。
これはいつもの事だ。
前まではそれで諦めていたけれど、俺だって、避けられてばっかなんて悔しい。
アオイの行動パターンだって把握した。

俺はゆっくりとした足取りて教会へと足を踏み入れる。
目の前には神々しい祭壇、周りにはたくさんの席。
その一番前の席に、神父様の背中を見つけた俺はそこへ歩み寄り、神父様の隣に腰掛けて抱きつくようにしているアオイへと視線を向けた。

「おや、ジャン」

「こんちは、神父様!俺アオイと遊びたいんだけど…ずっと逃げるんだ」

今までの事を思い出すと少しだけ腹が立って、やるせなくて、悲しくなって…泣きそうになるのを耐えていたら、神父様は優しい笑顔を見せて頭を撫でてから、その腕で俺を抱き寄せた。
その時、アオイと目が合って、お互いたぶん驚いた顔をしたんだと思う。

「アオイはね、声が出ないんだ」

「え…?」

「よほどショックな事があったんだろうね…それに、言葉もあまり理解していない」

「…じゃぁ、俺の言ってること…わかんないって、事?」

見上げて訊ねた俺に、神父様は困ったように苦笑して、俺たちを抱き締める腕を緩め、俺とアオイの手を掴むとそれを合わせてギュッと握らせた。

「アオイはね、言葉は通じないが…優しい人だと感じれば、ちゃんと答えてくれるよ?」

そう言われた俺は握った手をそのままに、アオイの前に立ってその顔を見つめた。

「俺、ジャン!ジャン…わかる?こわくないよ?」

ゆっくり喋って伝える。
するとアオイは小さく頷いて、可愛らしい笑みを見せてくれた。
その瞬間、俺はコイツに恋をしたんだ。




それからというもの、アオイは俺を見つけると駆け寄ってきて側にいるようになった。


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