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「………―だってよ」

「えぇ…ッ!?」



点呼もまだの早朝、何をそんなに話す事があんのか彼方此方でヒソヒソ話が始まっていた。

まだ惰眠してたいってのに……

もぞもぞと身じろいで寝返りをうっても聞こえてくる囚人達の話を纏めると、だ……
今日新たに移送されてくる男がそうとーヤバいヤツらしい。
これが初犯で、殺人…州外れのココに送られるってのは確かにヤバいのかもしれない。
けれどそれがマジかなんか分からないし、結局尾ひれはひれ、流れに流れる間にどれが本当なのかも分からなくなるからだ。

…ま、どんなヤツでも俺には関係ないけどナ

枕を頭から被って、導かれるまま眠りへと入っていった―………






点呼のブザーが刑務所内で鳴り響く。

「……アオイ!アオイ・九条!」

「!!?」

隣の房は確か昨日まで空だった。
つまり今呼ばれたのは今日入ってきた新入りだということ……
そして、聞き間違いでなければ"アオイ"と言った。

「ジャン!ジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテ!起床時間―……って、珍しいな…起きてるなんて」

「おはようさん、ジョシュア!ところで隣…どんなヤツなのけ?」

「あぁ、白髪の無口で、人の良さそうな奴だ……なのにこんな所に入るんだから、人は見掛けによらないな…」

ロイドじゃない事に安堵して何となげに聞いてみると普通に返ってきた。

聞いた限りでは判断がつかない。
俺の知ってるヤツはジャポネーゼで、黒髪サラサラヘアーだったはずだ。

同姓同名の別人?
この広いアメリカでも、ジャポーネ特有の名前はそうそう有り得ないだろう。

鉄格子が嫌な音を立てながら開けられ、ジョシュアが小さく手を振って去って行くのを見送る。
こんな所でウダウダ考えても始まらない。
そうと決まれば即、行動だと俺は立ち上がり、房を出て特徴の一致する人物を探した。

シマシマ模様の波の中、まだそう遠くないそこに目当ての白髪を見つけて、俺は新しいオモチャでも見つけたような気分でソイツに駆け寄った。

「チャオ!アンタ新入りのアオイだろ?俺隣の房なんだ!ヨロシク〜★」

「ん?……―!、ジャ、ン…?」

肩を叩き、まずは第一印象!と笑顔で声を掛ければ、その男は気怠げに振り返ったかと思うと次の瞬間には目を見開いて、俺の名前を口にした。

今度は俺の驚く番だ。

突然、ホント何の前触れもなしにギュッと抱き締められてしまった。
ワオ、熱烈大歓迎?

「え〜っと、え?」

「……っ、会いたかった…ジャン…ッ!」

拙いイタリア語、どことなくクセのあるそれを聞いて、確信を持った俺は感極まって目頭が熱くなった。

間違いない!
コイツを俺は探してたんだ…!!

「俺も、会いたかったゼ!」

抱き合う囚人、それも男同士を奇異の目で見つめる周りを気にする事もなく、俺は自分の幸運を実感した。

あぁ、神様!
今回はアンタに感謝するぜ?
俺とアオイをまた引き合わせてくれた事を!





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