9/4
今日の天気は清々しいまでの快晴!
そんな日に、俺はアイツと出会った。
「アオイ今日から鞄持ちとしてウチの……」
「チャオ!」
トーニオの言葉を遮って、彼の後ろから出て来たのは金髪金目の男。
人懐っこそうな顔でヒラヒラと手を振って俺に笑いかけてくる。
「“チャオ”?って、トーニオどういう意味?」
「イタリア語での挨拶だよ。アオイ、コイツはジャンカルロだ。お前と歳も近い、仲良くしてやってくれ」
“お前の事は説明してある”と言ったトーニオに頷いて、俺はジャンカルロと呼ばれた少年に笑顔で応える。
“俺の説明”とは俺が日本人で“日本語以外話せない”という事だ。
ここでちょっと違和感を感じた人、間違っちゃいないぜ?
トーニオは俺に言った。
“お前には所謂“スパイ”をしてほしい。ジャポネーゼというだけで皆馬鹿にしている。だから喋れない聞き取れない、そう言った風を装い、裏切りがないか探り報告してほしい”
だから今の俺は勉強中。
組織のヤツらの周りをうろつき、何も分からない無口な子供を演じ、ただトーニオに可愛がられて殺ししか出来ないジャポネーゼ…そういう体を装うのが俺のやるべき事。
それをこの少年には話したという事は、多少なりとも信用していい人物なのだろう。
「俺、ジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテ!ジャンって呼んでくれていいぜ?歳も近いって、カヴァッリの爺さんから聞いてる、準構成員同士仲良くしようぜ!」
単語を拾って頭の中で組み立てる。
今のは英語だから少しわかりやすかった。
手を出してくる彼に倣ってこちらも手を差し出す。
米国式の挨拶にも大分慣れてきた。
「ジャン、まだアオイは不慣れな事が多々あってな、お前から色々教えてやってくれ」
「あいよ、と…アオイいくつ?俺16」
「えっと歳か…“17”」
「ハァ!?そのツラで俺より年上かよ!ジャポネーゼは童顔ってマジなのネ」
これがジャンカルロとの出会い。
そして話はトントンと進み、俺を理解してくれる唯一の人物ということもあって一緒に寝食を共にする中になった。
トーニオは寂しがってか反対していたけれど、ジャンに上手く言いくるめられて諦めたらしい。
そしてこの同居人、ジャンカルロは趣味が脱獄になるほど刑務所通いになるため実質、あの部屋は俺1人の生活になっていた。
[ 4/9 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]