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だとすればもうお手上げだ。
アキラ本人に聞き出すしかないと悟った俺は箸を置いて彼を見つめた。

「アキラ」

「………」

なおも無視し続ける彼にまた溜め息がこぼれる。
その時一瞬だけ、彼がこちらへと視線を向けてくれた。

「なぁアキラ、俺何かしたのか?」

すぐに逸らされてしまったがそれでも言葉を続けると、アキラは躊躇いがちにこちらへと視線を向けてきた。
その視線は先程までと違って恨めしげというか哀しげなものだった。

けれど俺は学習してる。
アキラは自分の感情を口にするのが苦手で口下手だという事。
根気強く、駆け引きしながらでないと彼の思いを全て話してもらう事が出来ない。
トシマから脱出して二人で住み始めてから学んだ事だ。

「せっかく二人で外食だってーのに、このままじゃお互いつまらないだろ?」

「…………」

「俺はアキラとデートだって楽しみにしてたんだぜ?」

「それは…ッ…」

ようやく反応を示してくれたアキラに苦笑して、テーブルの上で震える彼の拳へとそっと手を伸ばす。
ピクリと跳ねた身体が触れたそこから伝わり、同時に驚きに見開かれた瞳で見つめ返される。

「アキラが不機嫌なのは分かるけれど、どうして不機嫌なのかまでは俺にも分からない。だから教えて?俺が悪いなら直したいし」

そう告げて親指で優しく彼の手の甲を撫でながら微笑む。
するとアキラは渋りながらも重い口を開いてくれた。

「………アンタが」

「俺が…?」

「アオイが待ち合わせ場所で…」

“待ち合わせ場所”と発した瞬間、彼の表情が哀しげに歪み言葉を噤む。
けれど咎める事はせず、彼が話してくれるまで根気よく待った。

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