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「なぁ、悔しくねぇのかよ…?俺にここまで言われてんだぜ?……いい加減寝過ぎなんだよ…っ、早く起きてそばに来いよ…」

すがりつくように石碑へと腕を回し、みっともなく俺は泣いていた。
ジュリオを失った悲しみは計り知れない。

失って気付いたのはアイツへの想いだ。
それをちゃんと伝えたかった、アイツが生きている間にその事に気付いていたなら…それが悔いてならない。

「ジュリオ…っ、…?」

顔を上げた瞬間だった。
一陣の風が吹き抜け、瞼を強く瞑った直後、ふんわりと懐かしい香りと共に温かい風が身体を包んだ。


―……ジャンさん……―


「ジュリ、オ…?」

耳を掠めた聞き逃してしまいそうなほど微かな声。
懐かしいその響きにまた目頭が熱くなる。

「…やっぱ教会で呼んだのはお前かよ、ジュリオ」

肩に掛かったショールへと手を伸ばして触れる。
すると何だかジュリオの腕に触れているような気がして可笑しくなる。
イヴァンに言ったらついに頭がイカレやがったとか言われそうだと、そんな事が頭を過ぎった。

「化けて出るほど、逢いたかったのけ…?ん?ジュリオちゃん…」

言葉の代わりなのか身体を少し締め付けられるような感覚を捉え、抱き締められているんだと考えると胸が熱くて涙がまた溢れる。
目には見えない、けれど確かに今ジュリオは俺に触れている、そう思うと愛しくてたまらなかった。


―……愛、しています……ずっと、あなたを……俺は…ジャンさん……あなたが好き、です……―


「ジュリオ、ジュリオっ…俺、も…俺もお前が好きだ!愛してる、ジュリオ……、」

伝えた瞬間頬に何かが当たった気がして、拘束が解かれたように自由になった。

違和感を感じた頬に触れてその手を見ると、可笑しな事に季節外れの桜の花びらがあった。

もっと触れて、もっと伝えたかった。
けれどそれはそっちへ逝くまで取っておく事にしよう。

そう俺は誓って花弁へと口付けた。


Arrivederci Giulio.



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