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俺のそばにいたいと言ったアイツ―……
俺を好きだと、尊敬していると言ったアイツ―……
俺をずっと、守りたいと言ったアイツ―……
その“守りたい”ヤツを守った故に、ジュリオはこうしてここで眠っている。
永遠に醒めることのない夢を、アイツは一人見ているのだろうか。
甘くほろ苦い粒を1つ箱から取り出して口へと放る。
予想を裏切らない味を感受して、彼が生きた証へと視線を走らせる。
綴られた数字が短くて、何とも形容しがたい気分になる。
この世界では死が隣り合わせ、そんなの百も承知だ。
もっと若くして逝った奴らなんて五万といる。
けれどコイツだけはどうしても割り切る事が出来ない。
「ホント、バカだよな…ジュリオは………大バカだぜ」
刻まれた名前に指を滑らせながらゆっくりとにじり寄る。
居ない相手を罵るのはどんなに滑稽だろうか。
「“ジャンさんをずっと守る”?出来てねぇじゃねぇかよ…ッ、“ずっとそばにいます”って、言ったじゃねぇかよぉ……っ…」
額を石碑へと寄せてアイツに聞こえるように話す。
鼻の奥が熱くなって、掌を釘で刺したような痛みが走る。
こんなこと言ったってどうにもならない事くらい分かっていても、言わずにはいられなかった。
「お前が死んじまったら!誰が守るんだよッ、…誰が一緒にアイス食うんだよ……!なんで、」
堪えていたものが雫となって頬を濡らした。
なま温かかったそれは次第に冷えていき、石碑へと伝い落ちる。
「なんで最期に“愛してる”なんて、言うんだよ―………っ」
あの最期の言葉が俺を離してくれない。
血まみれた手で、優しく俺に触れてきたジュリオが笑って言った。
言えてよかったって、そんな顔して俺を庇うように覆い被さったまま……
還らぬ人になった。
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