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立ち尽くしたそばを人の波がまるで俺が見えていないかのように通り過ぎていく。
ここは教会。
日曜はいつもここでミサがある。
振り返って見上げると屋根に取り付けられた十字架に丁度陽が照って、なんとも神々しく見えた。
「ジャン!」
振り返ってみるとそこにはCR:5のカポレジームが俺を待っている。
「おいタコ助!何ちんたらしてやがんだファック!」
「あぁ?そんな口利いちゃうイヴァンちゃんにはタコ食わすわヨ?」
「ははっ、そりゃ見ものだぜ!」
「まったくハニーは…」
いつもと変わらない。
他愛ないやり取りに思わず苦笑した。
けれどやっぱり、足りない……
痺れを切らしたイヴァンが怒鳴り出し、ルキーノへと突っかかるのを見つめて足を踏み出した時だった。
―……ジャン、さん……―
「……え、っ」
呼ばれた気がして振り返る。
けれどそこには教会の入り口とそこから出てくる人ばかり。
辺りに目を凝らして見渡してみても俺へと視線を向けてるヤツなんて誰もいない。
「おいジャンどうかしたか?いい加減いかねぇとイヴァンのヤツが…」
駆け寄ってきたルキーノには目もくれず、俺はずっとアイツを探していた。
「おい、ジャン!」
「―、ッ!!」
肩を掴まれようやく俺はルキーノに目をやる。
眉間に皺を寄せて、怒っているというよりも焦りや困惑といった表情をしたルキーノに大丈夫だと一言声を掛けてからもう一度、振り返って確かめる。
「だよなぁ…」
「ジャン?」
「あぁ、悪いけどお前ら先、帰っててくれ。寄りたい場所があるんだ…」
俺の様子を怪訝に思ったのか、ルキーノは表情をより一層険しくして護衛がいると低く告げる。
いらないっつったら、強引にでも連れて帰りそうだと践んで、分かったと答えれば2人の兵隊と車一台を残して彼らは去っていった。
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