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空が白んできた頃、久方振りに帰ってきた自宅で鼻を鳴らす。
いつもより甘い香りと、彼の手料理、それから愛しい彼の匂い。
肺を満たすように吸い込み、ジュリオは彼がいるであろう寝室へと向かった。
仕事を済ませ早めに連絡を入れていた事で予定より早く帰ってこられたジュリオ、早くジャンに会いたいという気持ちがそうさせていた。
昨日報告の電話を入れた際、これからイヴァンの誕生会をするのだと嬉しそうに言ってきたジャンに、少しばかり嫉妬をしていた自分を思い出す。
寝室に続く扉を開いて中へ足を踏み入れる。
そこには、いつもジュリオが使っている枕を抱いて寝るジャンの姿。
その様を見ただけでジュリオは愛しさを募らせた。
そっと物音を発てないように歩み寄り、ベッドのそばで屈むとその愛らしい寝顔を見つめる。
カーテンから零れる薄明かりに照らされたジャンの睫が金色に煌めくそれを、ジュリオは何と綺麗なのだろうと吐息を吐いて思う。
「…ただいま、戻りました……ジャンさん」
寝顔を見つめていたい反面、今は閉じられていて見ることのできない蜂蜜の瞳に自分を映してほしいという葛藤が渦巻いた時だった。
「おかえり、早かったなジュリオ」
くるはずのない返答にジュリオは困惑して瞳をさまよわせる。
その様子を見たジャンはクスリと笑んで両手を広げた。
「…あ、あの……ジャンさん…」
「…さん付け、禁止だろぅ……ハグさせろよ」
戸惑いながらも近付いてくるジュリオを抱き締め、その冷たさを温めるよにジャンは回した腕で優しく背中をさすっていく。
「いつから、俺がいる事…気付いてたんですか?」
「ん〜?あぁ、実はジュリオが帰ってくるちょーっと前にな、ベッド入ったんだよ…だから最初から………あ〜しまった、風呂入っときゃよかったな」
「平気、です…こっちの方が俺、好きです……ジャンの匂いが、して…」
肩口に擦りよるように鼻先を埋めてくるジュリオに笑って、ジャンはそのままベッドに入るよう促す。
「ジャン……?」
「ちょい、寝ようぜ?起きたらさ、買い物行って飯食って、んでケーキ食いながらエロい事…しような、な?ジュリオ」
「…はい…はいっ、ジャン」
「おやすみ、ジュリオ…メリークリスマス」
「メリー、クリスマス…ジャン……良い夢を」
微笑みあった二人は引き寄せられるように唇を重ね、抱き合うとゆっくりと瞼を閉じた……
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