25/19
あれからアオイがとびきりの情報を教えてくれた。
どうやらある房に抜け穴があり、そこから抜け出せるかもしれないとの事。
もう少しで聞き出せそうなんだと言ったアオイにそれを任せて、俺も色々と考えを巡らせる。
ジュリオの移管が三日後―……動ける時間はあと二日しかない……!
「ジュリオ」
「おはようございます、ジャンさん」
「お前…来週あたりよその刑務所に移管されるしいな」
「……みたいです…ベルナルドから聞きました………俺の弁護士も、その見込みだと言っています」
そんな話をしているというのに、ジュリオときたら穏やかな笑みを浮かべていて、何か良いことでもあったのかと気になった。
「なんだ、機嫌いいな?」
「はい……予備の靴下、手に入ったんで………これ」
「土……?」
開かれたジュリオの掌には少量の土が握られていて、先程の"予備の靴下"とを関連付けてようやく合点がいった。
ブラックジャックか!
靴下に入れれば立派な鈍器になる…
「ナイフのが、得意なんですけど……」
「いや!すげー助かる!そいつは持っててくれ、必要に応じて頼む!」
シュンとした事に少々焦ってそう言えば一転、小さな微笑みをたたえてコクンと頷いた。
この従順さがやはり気になって訊ねてみる事にした。
「…どうしてお前さ、そんなに俺に低姿勢なんだ?」
「ジャンさんは凄い人、ですから」
凄い?"凄く運の良い奴"とは言われても"凄い奴"なんて言われたことがねぇ…
CR:5の一員としてやってきたことも……ハッキリ言って下っ端の小僧仕事だしなァ……
爺様のお供とか、運び屋とか、鍵師代わりとか………ショボッ
"LUCKY DOG"
そう嬉しそうに言うジュリオに、なんだかとても申し訳ない気分にさせられた。
「……それでジュリオが怒った、と」
「だって本当の事だし…」
只今アオイとダベりながらお散歩中。
俺の言動に怒鳴ったジュリオ、それをたまたま近くにいたアオイがやってきて食堂へと向かった。
今はその帰りというワケだ。
「そうかなぁ…俺もジャンは凄いと思うけど」
「どこがよ」
「行動力はあるし、経験もある…周りを惹きつけるのも、それに当てはまるしそれに……」
「も、もういいって!!」
聞いてるこっちがこっ恥ずかしくなってきた!
まったく、アオイって恥ずかし気もなくこんな事よくも言えるよな。
「そうだ、ジャン…こっちのルートは確保出来た」
「マジ!?」
「あぁ、今日16番房の奴に話はつけたから…」
アオイの話ではどうやら地下道に続いているようだが、如何せん中がどのようになってるか予想がつかず、ガタがきて崩れる可能性は捨てられないらしい。
脱獄なんてリスキーなゲームだ。
ルートが2つもあるなら余裕が持てる。
「あともう一つ、今日死刑の奴がいるって聞いた」
「!」
役にたった?と耳打ちしてくるアオイに笑顔で答えれば、良かったと嬉しそうにはにかんでいた。
[ 19/25 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]