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あれからアオイがとびきりの情報を教えてくれた。
どうやらある房に抜け穴があり、そこから抜け出せるかもしれないとの事。
もう少しで聞き出せそうなんだと言ったアオイにそれを任せて、俺も色々と考えを巡らせる。

ジュリオの移管が三日後―……動ける時間はあと二日しかない……!






「ジュリオ」

「おはようございます、ジャンさん」

「お前…来週あたりよその刑務所に移管されるしいな」

「……みたいです…ベルナルドから聞きました………俺の弁護士も、その見込みだと言っています」

そんな話をしているというのに、ジュリオときたら穏やかな笑みを浮かべていて、何か良いことでもあったのかと気になった。

「なんだ、機嫌いいな?」

「はい……予備の靴下、手に入ったんで………これ」

「土……?」

開かれたジュリオの掌には少量の土が握られていて、先程の"予備の靴下"とを関連付けてようやく合点がいった。

ブラックジャックか!
靴下に入れれば立派な鈍器になる…

「ナイフのが、得意なんですけど……」

「いや!すげー助かる!そいつは持っててくれ、必要に応じて頼む!」

シュンとした事に少々焦ってそう言えば一転、小さな微笑みをたたえてコクンと頷いた。
この従順さがやはり気になって訊ねてみる事にした。

「…どうしてお前さ、そんなに俺に低姿勢なんだ?」

「ジャンさんは凄い人、ですから」

凄い?"凄く運の良い奴"とは言われても"凄い奴"なんて言われたことがねぇ…
CR:5の一員としてやってきたことも……ハッキリ言って下っ端の小僧仕事だしなァ……
爺様のお供とか、運び屋とか、鍵師代わりとか………ショボッ

"LUCKY DOG"

そう嬉しそうに言うジュリオに、なんだかとても申し訳ない気分にさせられた。




「……それでジュリオが怒った、と」

「だって本当の事だし…」

只今アオイとダベりながらお散歩中。
俺の言動に怒鳴ったジュリオ、それをたまたま近くにいたアオイがやってきて食堂へと向かった。
今はその帰りというワケだ。

「そうかなぁ…俺もジャンは凄いと思うけど」

「どこがよ」

「行動力はあるし、経験もある…周りを惹きつけるのも、それに当てはまるしそれに……」

「も、もういいって!!」

聞いてるこっちがこっ恥ずかしくなってきた!
まったく、アオイって恥ずかし気もなくこんな事よくも言えるよな。

「そうだ、ジャン…こっちのルートは確保出来た」

「マジ!?」

「あぁ、今日16番房の奴に話はつけたから…」

アオイの話ではどうやら地下道に続いているようだが、如何せん中がどのようになってるか予想がつかず、ガタがきて崩れる可能性は捨てられないらしい。
脱獄なんてリスキーなゲームだ。
ルートが2つもあるなら余裕が持てる。

「あともう一つ、今日死刑の奴がいるって聞いた」

「!」

役にたった?と耳打ちしてくるアオイに笑顔で答えれば、良かったと嬉しそうにはにかんでいた。





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