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朝の台所は戦場だ。
「だから、贅沢をしては民に示しがつかないと言っているでしょ」
「贅沢って…ただ味噌汁に卵入れたいって言ってるだけじゃない!」
テキパキと手を休める事なく動かしながら私は朝食の準備をしながら怒鳴る。
それを聞いて呆れたように溜め息を吐くのは幸村様の小姓、六さん。
確かに卵は貴重だけど、だからって毎日豆腐とネギだけなんて飽きるというものだ。
他のおかずは一品必ず変えているのだから我慢しなさい、とまるで母親のように諭してくるけど…そんなにわがままな事だとは思わない。
「今日は若布あるんだから絶対卵!ってか1個しか入れないのに何でそこまで頑なかなぁ?」
「え……一個、ですか?」
忙しなく動いていた六さんの手が止まり、瞠目した眼がこちらを向いてパチクリ。
「ははっ、六さんのあんな顔久々に見たや」
皆と朝食をとって、それを片付け終わって今度は洗濯物。
今日の見張りは夜からだから夕方までに出来る事はやっておかないとならない。
カゴいっぱいに入ってる汚れ物を落とさないように抱えて洗い場を目指して足を進めた。
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