「あ、あやめ!」
「あ? どしたんだ、お前?!」
「兄さんになんかされたの?!」
「え、俺?!」
「黙れ白鳥! 俺のかわいい妹を泣かすんじゃねぇよ!」
「犬飼先輩まさかのシスコンですか?!」
「違ぇよ、っていうかもう白鳥妹も黙っとけ!」
「あ、ち、違うの!」
「は?」
「あやめ?」
どうやら泣きそうじゃなくて、零れてはないものの涙が目にだいぶ浮かんでいたらしい。 暴走しだした2人をとめるため、目元を軽く拭って声をあげた。
「白鳥先輩は、何もしてないよ、だから責めないで。」
「あやめ、」
「でも、ほんとに何もなかったらあやめ泣かないじゃない!」
「泣いてない、」
「泣いてる!」
「泣いてない。」
「泣いてるの!」
「泣いてないって!」
「ほら、そこまでだ。」
口論になりかけのとこをお兄ちゃんがとめる。 罰が悪くなって、視線をさ迷わせたときに、ふと白鳥先輩が目に入って。 困ったように眉を下げる先輩に、胸が痛い。
「はぁ……お前らは俺たちみたいにはできないのか。」
「……先輩や兄さんみたいに宮地先輩に怒られたくないです。」
「なんか言ったかー、白鳥妹?」
「なんでもないです!」
気を使ってくれている。 2人のやりとりがなんとなくそんな気がして。
「げっ、あやめ!」
「あーっ! 犬飼先輩が泣ーかした、泣ーかしたー!」
「茶化すなバカ! す、すまん、泣かすつもりは……っていうか俺、泣かすようなことしてなくね?!」
「ふっ、……ふふ、」
涙は流れたけど、2人の会話がおもしろくて思わず笑ってしまう。 それを見た3人がホッと息をついたのに、私は気付かなかった。
(「あ、あのさ!」) (「? なんですか?」) (「昼休み、ちょっと時間くれる?」) (「……え、」) (「兄さんが告白?!」) (「妹は渡すかああ!」) (「外野うるさい。」) (「「は、はい……(目が笑ってない…!)」」)
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