[]




始まりはお昼休みのときのあやめの一言だった。


「ダブルデート、行きませんか?」

「ダブルデートぉ?」

「うおおおおおおいいなそれ!」

「兄さんうるさい。」

「みやこ…!」


普段からあんまり自分のしたいことを言わない妹だったから、少しだけ驚いた。
しかしそれがダブルデートとくれば、兄としては嬉しいやら悲しいやら。
別に白鳥が嫌いなわけじゃないが、妹といちゃつく白鳥はなんか……イヤだ。
白鳥も同じ気持ちになったりするのだろうか。
……いや、考えないでおこう。


「ダブルデートって言ったってどこ行くんだ?」

「え、いいの?!」

「白鳥兄妹は問題なさそうだし、俺だってあやめのお願いを突っぱねるほど非道じゃねぇよ。」

「あやめちゃんとお出かけかー、ぐふふ。」

「兄さん気持ち悪い。」

「やめてやれ、みやこ。
白鳥に聞こえたらめんどうだ。」

「はーい!」


とりあえず、みやこの頭を撫でてやりながら言ってやる。
返事だけは立派だよな、こいつは。

じゃなくて、だ。
何の話をしてたっけな。


「あぁそうそう、で?
あやめはどこに行きたいんだ?」

「え、えっと、」

「遊園地!」

「安心しろ、白鳥には聞いてない。」

「遊園地!」

「……みやこにも聞いてない。」

「いや、遊園地でいいんじゃないかな?
それから、ムリして私の意見通さなくても。」


あやめに苦笑された。
確かにみやこが言ったとき、遊園地でいいかとは思ったけどだな。


「じゃあ今週の土曜、」

「…は、部活だな。」

「日曜もだね。」

「じゃっ、じゃあ来週の土曜!」

「も、部活だ。」

「あ、でも日曜は、」

「……ごめん、生徒会で呼ばれてる。」

「再来週!」

「部活だ、部活。」

「「「「……。」」」」


……恐るべし、部活と生徒会。





(「なんて無駄な会話だったんだ。」)
(「ごめんなさい…。」)
(「ちょっと隆文先輩! あやめは悪くないよ!」)
(「そうそう! ほとんど俺らの部活が原因なんだし!」)
(「でも、みんながオフの日に限って生徒会があるし、」)
(「だあああ、冬休みなら行けるだろ!」)
(「冬休みだったらイルミネーションとかキレイだよね!」)
(「な、ほら、元気出せって!」)
(「みんな……、」)




- 1 -
*PREVNEXT#