あやめと兄さんが付き合ってから。 私は1人でぼーっとすることが多くなった。
「よぅ、白鳥妹。」
「あ……犬飼先輩、こんにちは!」
まさかこんなタイミングで犬飼先輩がくるとは思わなくて、少しリアクションが遅くなった。 でも、いつもと変わらない笑顔を浮かべて挨拶した、のに。
「寂しいのか?」
「え? 何がですかー?」
「お前、やっぱバカだよなぁ。」
「ヒドいです!」
胸の内側から抉られたような気分がした。 あやめもそうだけど、この先輩もなかなか人の心を読むのがうまい。 今だって、私の心情を察してか優しく頭を撫でてくれる。
「別に、何も変わらねぇだろ。」
「………。」
「俺も、あやめと何かが変わったわけじゃない。 もちろん白鳥ともだ。」
「………でも、」
続きの言葉は言わずに飲み込んだ。 あんまり言いたくなかったし、言わなくても先輩には通じる。 現に、頭を撫でていた手が一瞬止まったけど、またさっきと同じように動き出した。
「お前って、白鳥と違ってめんどくせぇな。」
「悪かったですね。」
「いや、今のは言い方悪かったな……でも、俺は嫌いじゃねぇよ、お前みたいなヤツ。」
ぽんと、撫でていた手で頭を軽く叩く。 それを合図みたいに先輩を見上げれば、ニヤリと笑った犬飼先輩。 あやめとは違う、犬飼先輩の表情。
少し、心臓が跳ねたような気がした。
(「送ってやるよ、帰ろーぜ。」) (「……ありがとうございます。」)
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