「あ、莉羽。」
ぼーっと教室の窓から外を見ていると、ジャージ姿の莉羽がいた。 次が体育なんだろう、ぞろぞろ生徒が出てきている。
特にやることもねぇし、ボケッと莉羽を観察することにした。
「(……相変わらず笑顔全開だな。)」
にへにへと楽しそうにクラスメイトと笑う莉羽。 下心のあるやつが大半だろうが、莉羽の人柄というか、手荒な真似をするやつは少ない。 まぁそんな真似しようとしたやつは、莉羽に被害が及ぶ前に俺がなんとかしてるから、ってのもあるが。
「(……にしても、あいつちょっと無防備すぎやしないか。)」
ボディータッチをして、されて。 見ているだけでちょっとイライラしてくる。 ………ん?
「いやいや、イライラってなんでだよ。」
「お前……百面相の次は独り言か。」
「あ、悪ぃ。」
ってなんで謝ってんだ、俺。 話しかけてきたクラスメイトも、こんな俺の対応に驚いたのか目を瞠る。
「どうした、不知火。 変な物でも食ったか?」
「いや、何でもない。 ってさりげに失礼なこと言うな。」
俺のツッコミを笑ってごまかしたクラスメイトは「なんかあったんなら相談くらい乗るぜ?」とだけ言って去っていった。 あいつ……その去り方はドラマの見すぎだろ。
じゃなくて。 俺は授業が始まっても、体育をしている莉羽が気になって仕方なかった。
(「(あ、転んだ。)」) (「おいこら不知火ー、お前が見るのは窓の外じゃなくて黒板だぞー。」)
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