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「はぁ、」

「くひひっ、お疲れのようだねぇ?」


ため息を漏らせば、どこからともなく現れた桜士郎。
俺はちらりと視線をやってから、またため息。


「そんな疲れるなら、なんで姫ちゃんを生徒会に誘ったのさ?」

「姫ちゃん、って莉羽のことか。」

「くひひ、結構いいセンスだろ?」

「まぁ、わからなくもないが………姫、ねぇ。」


小柄で幼さの残る莉羽は同級生のみならず、というか上級生からの人気が特にすごい。
月子とは違うタイプのかわいさに、人懐っこい性格はまさに小動物的な愛らしさだからな。
ただ、残念すぎるくらい俺に懐いてるからそれに泣いたヤツもたくさんいるとか。


「で?」

「あん?」

「さっきした質問のこ・た・え!」

「あぁ、」


桜士郎の質問に答えるべく、ちょっと昔を思い出した。
そう、あれは確か、入学式の前だったか。










「ううっ、向こう行ってよーっ!」


なんかそんな感じの声が聞こえたから、そっちの方に向かう。
すると、後ろは壁で前に猫(といってもまだ子猫)という形で、悪戦苦闘している女生徒。
そういえば、確か西洋占星術科に1人、女生徒がくるとか言ってたな。
月子じゃねぇってことはあいつがその1年か。


「そこ行くお人っ!」

「は?」

「ど、どうかっ、どうか助けておくんなせぇ!」


テンパってるのか、時代劇っぽい喋り方。
いや、これが素の喋り方なのか?
まぁどっちでもいい。


「おら、怖がってるからあっちいってやれ。」

「にゃー」


とりあえず手で追い払ってやる。
するとその女生徒は、大きく息をついた。
ゆるりとそっちをみれば大きな目とばっちり合って。


「助けてくれて、ありがとうございます!」

「別に大したことしてねぇから顔あげろよ。」


ぺこりと思いっきり下げた頭に、苦笑しながらそう言えば素直に従ってくれた。
というか、今普通に喋ってたよな?
やっぱ時代劇はテンパってたからか。


「あぁ、お前。」

「はい?」

「生徒会、入るつもりねぇか?」

「生徒会、ですか?」


ほとんど無意識だった。
無意識のうちに莉羽を勧誘していて。
莉羽はしばらく考えたあとに、頷いてくれた。





(「……てなわけであいつを生徒会に引き入れたんだよ。」)
(「くひひっ、なるほどねぇ。」)




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