「それにしても莉羽。」
「はい?」
「なんで俺だけ役職名なんだ。」
「……え、」
会長の言葉にイヤな予感がする。 これはもしかして、名前で呼べパターンなんじゃなかろうか。
「えと、なんで、と言われましても、ですね。」
「四季や颯斗や月子は名前だろ? だから俺のことも名前で呼べ、会長命令だ。」
「なんて横暴な!」
「今に始まったことじゃないだろ、諦めろ。」
イヤな予感ほど的中するよね、と項垂れる私に会長は圧力をかけてくる。 職権濫用だ!
「あのですね、会長。」
「2人のときは敬語もいらん。」
「またそんな無茶振りばっかり…!」
私の言葉に意地悪く笑う会長。 もうこれは腹を据えるしかない、か。
「か、」
「ん?」
「かず、き……くん、」
私がそう言えば、少し思案顔をしてから「ま、ぎりぎり及第点だな。」と頭を撫でてくれた。 うぅ、嬉しい、けど、すごく恥ずかしい…!
「どうした?」
「恥ずかしい、よ…!」
「あ? さっきのキスに比べりゃどってことねぇだろ?」
「な…!」
私が恥ずかしがるのをわかってて言ってるだろう一樹くん。 そうとわかってても、私の顔は途端に赤に染まって。
「…一樹くんのばか。」
「ははっ、でもこんな俺も好きだろ?」
「……うん。」
嫌いになるはずなんてないよ。 そんな気持ちを込めてこくんと頷きながら答えれば、また私の頭を掻き乱す優しい手。 私はぎゅっと目を瞑ってそのあたたかさに身を委ねた。
一歩後退、二歩前進 (つまり終わりよければ全てよし、なんです。)
-fin-
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